カナダ政府はデジタルサービス税法案動議を提案、米USTR「あらゆる選択肢を検討」

(カナダ、米国)

トロント発

2021年12月23日

カナダ連邦政府は12月14日、今後の財政支出計画や経済見通しなどをまとめた2021年度経済・財政アップデートを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、その中でデジタルサービス税(DST)法案上程に先立つ動議を議会へ提案したことを明らかにした。2022年2月22日まで利害関係者からの意見を募集している外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

DST法案は、大企業がカナダのユーザーの関与や、データ、コンテンツの提供に依存している特定のデジタルサービスから得る一定の収入と、カナダのユーザーデータの特定の販売またはライセンスに対して、3%の税率を適用するもので、連邦政府は導入について2020年秋の経済声明で表明(2020年12月8日記事参照)後、2021年度予算案で2022年1月からの導入予定を発表していた(2021年4月26日記事参照)。しかし、10月8日、OECD加盟国を含む136カ国・地域が2023年のデジタル課税導入を目指すことで最終合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたことを受け、同日付でクリスティア・フリーランド副首相兼財務相は「いかなる状況下でもカナダ人の利益が守られるよう、2021年度予算に沿って、2022年1月1日までにDST制定を最終決定する法案を進める予定だ。DSTは2024年1月1日に課税されるが、それは国際協定に基づく税制を実施する条約が発効していない場合に限られる。その場合、2022年1月1日時点で得られた収入に関して、2024年に課税されることになる。新しい国際的な制度が適時に実施されることにより、このようなことが不要になることを切に望む」とコメントしていた。

12月14日のDST法案上程に先立つ動議提案を受けて、米国通商代表部(USTR)は翌15日に「カナダがDSTを採用した場合、USTRはわれわれの貿易協定や国内法に基づくものを含め、あらゆる選択肢を検討することになる」との声明を発表した。実際に、USTRはこれまで単独でDSTを導入した7カ国に対して、1974年通商法301条に基づく報復関税の発動を発表していた。しかし、その後、OECD合意を踏まえた個別の交渉を経て、いずれの国に対しても報復関税を未発動のまま終了させている(2021年11月25日記事参照)。

カナダ国内でも、カナダ商工会議所の政策・政府関係担当上級副会頭のマーク・アグニュー氏は「もしDST法が施行されれば、2022年1月1日にさかのぼって適用されることになり、企業は事実上、今後数週間後には税の徴収を開始せざるを得なくなる。この税金の遡及(そきゅう)的な側面は、OECDで合意されたことの精神に反するものであり、米国人の怒りを買う可能性がある」と、連邦政府の遡及適用方針を批判した(「ナショナル・ポスト」紙12月15日)。

(飯田洋子)

(カナダ、米国)

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