豊田通商「ものづくり学校」で第1期生が卒業

(インド)

アーメダバード発

2021年12月06日

豊田通商インディアの子会社TECHNO TRENDS AUTO PARK(TAP)が、グジャラート(GJ)州マンダル日本企業専用工業団地に展開しているプラグアンドプレイ型工場内に、人材育成機関「TOYOTA TSUSHO NTTF TRANING CENTER(TNTC)」を開校して3年が経過した。2021年11月20日に、3年間のディプロマ・コースを修了した第1期生の卒業式が執り行われた。

TNTCは2018年9月に開校、経済産業省より日本式ものづくり学校(JIM:Japan-India Institute for Manufacturing)の認定を受けた(2018年10月23日記事参照)。3年制のLearn & Earnプログラムのカリキュラムを通じて、インドの若者に日本式の労働倫理や技能を直接指導、製造現場の中核人材を育成することで、日本企業が集積するマンダル地域周辺の「ものづくり人材の不足」解消につなげていく。

卒業式に参列したインド起業家開発センター(CED)のプラサド博士は、来賓あいさつの中で「TNTCは学生の採用などの難しいチャレンジに挑み、世界標準の実務教育を提供している。インド全土に60カ所以上あるCEDのパートナー学校には、TNTCモデルのコミットメント、フィロソフィー、システムを学ぶようにと言っている。TNTCは非常に優れた重要なパートナーだ。TNTCに巡り合えた学生たちは本当に幸運だ」と祝福した。

卒業生の1人は「TNTCによって人生がいい方向に変化した。3年間、TNTCで多くの失敗を経験したが、卒業生1人1人が大変な努力をしてようやくこの場所にたどりついた。TNTCとの出会いがなければ今日の自分はなく、ディプロマ資格を得るチャンスもなかっただろう。全ての物事が好転し始めた」と語った。

今回TNTCから巣立った第1期の卒業生は27人。全員が就職を希望者していたが、このうち15人の就職が決定した(うち11人が日系企業に就職)。就職未決定の卒業生12人に関しては、日系企業複数社からの採用希望があったが、各種条件面(工場の立地、給与面)で、残念ながら合意には至らなかった。TNTCは2019年以降、毎年1クラスずつ開講し、これまでに累計91人が11の企業でOJTを経験した。また、2021年8月には第4期生のクラスが開講した。

2019年には、インド政府の高等教育局の傘下にある全インド技術教育評議会(AICTE)からの指導により、カリキュラム運営のために高等教育提供機関との連携が必要になったため、2020年8月にグジャラート州立工科大学(GTU)とMOU(覚書)を締結した。これにより、カリキュラムを履修した卒業生には同大学からディプロマが授与されることになった。

TNTCの運営に当たるTAPの尾崎真二郎社長によると、1.教育に対して各個人、家庭で理解にばらつきがあり、また就業時に他の安易な選択肢を選ぶ傾向から技能研修に関心を持つ学生が少なく、学生の確保が容易ではないこと、2.入学後のドロップアウトを防ぐための学生のモチベーションの維持、3.「新型コロナ禍」でのオンライン授業時に直面した農村部のインターネット環境の悪さ、など乗り越えてきた課題も多かったという。特に学生募集に当たっては、候補生の家庭環境を知るため農村に足を運んで対話するシステムも導入して、学生のポテンシャルの見極めを行った。

今回、さまざまな課題を克服しつつ第1期生を送り出したTNTCだが、今後の課題として、1.コース・カリキュラムの多様化によるさらなる実績づくり(2年制のディプロマ・コース設置や複数コースでの大学とのコラボなど)、2.講師陣の充実、3.地場のみならずインド全国での知名度向上、4.TNTCブランドの確立などが重要としている。

写真 TNTCの3年間のディプロマ・コースを修了した第1期生の卒業式(ジェトロ撮影)

TNTCの3年間のディプロマ・コースを修了した第1期生の卒業式(ジェトロ撮影)

(古川毅彦)

(インド)

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