7~10月の貧困率は43.8%に微減も、若年層は64.9%に悪化、民間調査結果
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2021年12月27日
アルゼンチン・カトリック大学の社会負債調査研究所(ODSA)が12月7日に公表した調査結果によると、2021年7~10月のアルゼンチンの貧困層は人口の43.8%となり、前年同期の44.7%から0.9ポイント減少した。うち、極貧層は同8.8%で前年同期の9.8%から1ポイント減少した(添付資料図参照)。新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けた2020年と比較して改善したものの、1,840万人以上が貧困状態に陥っていることになり、深刻な状態が続いている(注)。
ODSAの貧困調査は、国家統計・センサス局(INDEC)が実施する世帯アンケート調査(EPH)のデータに加え、独自の調査項目も含めて分析するため、EPHとは結果が異なる。INDECの2021年上半期の貧困率は40.6%(2021年10月7日記事参照)だった。
今回のODSAの調査結果で最も懸念されるのは、若年層の貧困の悪化だ。0~17歳の年齢層の貧困は64.9%で、前年同期比で0.3ポイント増加した。うち、極貧は14.7%で前年同期の15.7%から1ポイント減少した。
ODSAの調査結果は、生活必需品や基礎的なサービスに十分にアクセスできていない人が数多くいることを示唆している。調査結果によると、人口の30.7%が基礎的な食料、医薬品および医療サービスにありつけていない。水道、光熱など基礎的サービスは、人口の32.6%が不十分。さらに、人口の11.4%は水道、32.1%は下水設備を有していない状況だ。住宅は26.2%、雇用と社会保障は36.6%が問題を抱えているとしている。問題視されているのは、教育へのアクセスが人口の13.9%に悪化したことだ。新型コロナウイルス感染拡大による行動制限措置などによって対面授業が受けられず、2021年6月時点で全国の約100万人の児童・学生が、教育機関との連絡が途絶え中退したと報告されている。
カトリック大学の専門家は「2021年は2020年と異なり、行動制限措置が緩和されたものの、経済活動の回復は完全ではなく、インフレの加速によって各世帯の収入も大きく損なわれている。総人口の約10%は食料も入手できない世帯で生活していたことになる」と、今回の調査結果について説明した。また「政府が打ち出しているさまざまな補助金制度が存在していなければ、極貧層は8.8%ではなく18.8%に達しただろう」とも述べている。
(注)貧困層とは、基礎的食料と住宅、保健、教育、衣類、その他の日常的な基礎的支出(基礎的全体バスケット、CBT)を十分に賄う収入がない世帯と・人口を指す。2021年上半期のCBTは7万3,918ペソ(約8万2,788円、1ペソ=約1.12円)だった。極貧層とは、基礎的な食料(基礎的食料バスケット、CBA)を賄う収入がない世帯・人口を指す。2021年上半期のCBAは3万1,724ペソだった。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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