米環境保護庁、2030年リサイクル率50%達成のための「国家リサイクル戦略」を発表

(米国)

ニューヨーク発

2021年11月19日

米国環境保護庁(EPA)は11月15日、2030年までに固形廃棄物のリサイクル率を50%に高めるための「国家リサイクル戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。2030年のリサイクル率50%の目標自体はトランプ前政権下の2020年11月に発表されていたものだが、今回の戦略は同目標達成をサポートするものとEPAは位置付けている。

EPAによると、米国のリサイクル率は32%程度とされ、特に環境負荷が高いとされるプラスチックのリサイクル率は9%程度にとどまるとしている。同戦略は、リサイクル商品市場の改善、原材料の選別などによるリサイクル可能な製品の増加、リサイクル過程から生じる環境汚染の減少、など5つの目標を掲げている。現時点では詳細な規制などは記されていないが、今後数カ月の間に、州・地方政府や民間企業など利害関係者と調整して、同戦略を実装していくための行動計画を策定するとしている。マイケル・リーガンEPA長官は声明で、「わが国のリサイクルシステムは重大な改善を必要としている」「これまで過度な負担を強いられてきたコミュニティがこの戦略による利益を享受できるよう取り組む」と述べるとともに、「超党派インフラ法による投資(注)とともに、この戦略は雇用を創出、経済を底上げしつつ、リサイクルおよび廃棄物管理を変革するのに資する」と、同計画の意義を訴えた。

戦略策定の背景には、2017年末から中国で実施されている海外からの資源ごみの輸入禁止措置がある(2018年4月11日付地域・分析レポート参照)。この政策変更により、米国は自国のリサイクルシステムの見直しを余儀なくされ、米国議会は2019年にEPAに対し、国家レベルのリサイクル戦略の策定を義務付けたことから、今回戦略の策定に至ったという。

業界団体である米国化学協議会はEPAの発表に対し、「リサイクルの拡大と現代化を加速させるため、EPAおよび議会と今後緊密に連携していく」と歓迎するコメントを発表している。その一方で、オバマ政権時代にEPA高官を務めたジュディ・エンク氏は「より確固とした廃棄物削減の取り組みが必要だ」「問題はプラスチック包装が多すぎることだ」(「ワシントン・ポスト」紙11月15日)と述べるなど、取り組みが不十分といった声も一定数あることから、今後の利害関係者との協議を通じた詳細な実装計画の策定においては、紆余(うよ)曲折も予想される。

(注)超党派インフラ法には、固形廃棄物とリサイクル助成に3億5,000万ドルが計上されている。

(宮野慶太)

(米国)

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