サプライチェーンの人権問題認識は6割近く、2021年度米国進出日系企業調査

(米国、中国)

米州課

2021年12月27日

ジェトロが9月に実施した米国進出日系企業実態調査(2021年12月17日記事参照)では、サプライチェーンにおける人権問題について聞いた。その結果、58.5%の企業が経営課題として認識しており、企業規模別にみると、大企業(注)では66.1%と、中小企業(54.3%)より11.8ポイント高く、企業規模により認識に差があった。業種別では、自動車等(81.8%)、ゴム・窯業・土石(81.3%)、電気・電子機器部品(75.0%)で認識していると回答した企業の割合が高かった。これらの業種の企業に理由をヒアリングしたところ、「人権問題の定期監査が実施されているから」「顧客からの問い合わせが増えているから」などの声が聞かれた。

人権尊重に関する方針持つ企業は5割弱

サプライチェーンにおける人権尊重に関する方針を持つ企業は49.9%で、「方針があり、調達先に準拠を求めている」企業は21.2%、「方針はあるが、調達先に準拠は求めていない」企業は28.7%だった。「方針があり、調達先に準拠を求めている」企業では、米国の調達先に準拠を求めている割合が69.7%で最多、日本の調達先(43.8%)、米国・日本以外の調達先(22.5%)が続いた。業種別でみると、電気・電子機器部品では、日本の調達先に準拠を求めている割合が全体の37.5%となり、米国の調達先(31.3%)を上回った。

納品先企業から人権尊重に関する方針への準拠を求められたことがあるか聞いたところ、「米国の納品先からあり」が31.0%、「日本の納品先からあり」は5.6%にとどまった。

人権侵害リスクの具体的な懸念点としては、ジョー・バイデン米国大統領が通商政策の最優先課題としている「中国の新疆ウイグル自治区での強制労働問題」など調達先でのリスクや、「社員の人種構成や待遇格差」など社内労務に関することも挙がった。新疆ウイグル自治区の人権問題については、バイデン大統領が12月23日に、同自治区が関与する製品の輸入を原則禁止する法案に署名し、法成立180日後に禁輸措置が有効となる(2021年12月24日記事参照)。

本調査では、サプライチェーン(原材料・部品の調達先、米国市場向け製品の生産地、製品の販売先)の状況や今後の方針についても聞いた。その結果、製造業では、米国内からの調達比率が51.5%、日本からが30.8%だった。非製造業では、日本からの調達比率が46.6%で最多、米国内からは34.9%で続いた。生産比率は米国が65.3%、日本が21.5%だった。販売比率は、製造業、非製造業ともに米国内が最多(それぞれ80.2%、73.9%)だった。今後の方針では、米国での調達・生産・販売を拡大する方針の企業が多い一方、中国からの調達や生産を縮小する方針の企業が2~4割を占めた。

調査結果の詳細はジェトロのウェブサイトに掲載されている。

(注)本調査では、大企業は総従業員数100人以上、中小企業は同100人未満を示す。

(大塚真子)

(米国、中国)

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