スリランカ、化学肥料などの輸入禁止を全面解禁へ

(スリランカ)

コロンボ発

2021年12月20日

スリランカ政府は化学肥料などの輸入に関する官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2256/23)(2021年11月30日付)を発行し、化学肥料、農薬、除草剤などの品目に課せられていた輸入制限を撤廃し、輸入を再開すると決めた。

マヒンダナンダ・アルトゥガマゲ農業相は11月24日の内閣プレス会議において、政府は化学肥料などの輸入を許可することを決定したと発表し、同日から即時効力を発するとしていた。ただし11月24日時点では、実際の通関手続きに必要となる根拠書類が存在せず、官報の発行が待たれていた。

この輸入再開で、懸念されていた大幅な農産物の生産減を回避できることになったが、農業資材を取り扱う日本企業や現地企業にヒアリングしたところ、政府は官報とは別に、関連業界関係者らに対して通達を出している。この通達によると、輸入が可能となる化学肥料、農薬、除草剤のうち、農薬(殺虫剤と殺菌剤)の実際の輸入量は、マハ季(注)の当面半年間において、過去3年間(2018~2020年)の輸入実績平均値の30%を上限に設定されているという。

化学肥料の輸入禁止は、農業の完全有機化を目指すゴタバヤ・ラージャパクサ大統領が、5月6日から開始した。農家の健康被害や外貨流出の軽減という狙いもあった。しかし、輸入禁止の発表直後から、関連産業団体や企業らから農作物の生産性低下の懸念が指摘。見直しを求める声が相次いでいた。政府はこれら反発に呼応するかたちで、7月に化学肥料の一部輸入を解禁、10月には紅茶栽培に使用される窒素肥料の輸入を解禁するなど小出しの対応を続けてきた(2021年10月26日記事参照)。

政府は、今回の措置により、直近の農作物の生産性を確保する方向に動いたが、有機化への変革を妥協したわけではないとあらためて言及している。現在も、有機肥料を使用する農家に対しては、農地規模に応じて政府補助金を拠出し有機肥料の使用を促している。また、有機肥料製造企業には、生産性・品質の向上を目的に技術専門家を派遣して国産化の強化に取り組むなど、有機化へ向けた施策を着々と続けている。

(注)マハ季:年2回ある季節風シーズンのうちの1つ。北東からモンスーンが吹く10月から翌2月あたりまでの期間を指す。なお、もう一方はヤラ季と呼ばれ、南西モンスーンが吹く3月から9月までの期間を指す。

(糸長真知、ラクナー・ワーサラゲ)

(スリランカ)

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