改正失業保険制度、10月1日にさかのぼって施行

(フランス)

パリ発

2021年11月02日

フランスの最上級行政裁判所の国務院は10月22日、失業保険制度改正に関するデクレ(施行令)の緊急審理裁判による差し止めを求める労組の訴えを棄却した。この決定を受け、失業保険の給付額の計算方法が10月1日付で変更となった。これにより、失業保険の給付基準となる日額給与額(salaire journalier de référence)の算出方法は、従来の額面給与の総額を就労日で除したものから、最初の雇用契約の初日から最後の雇用契約の最終日までの雇用契約期間を就労していない失業期間も含めた日数で除したものに変更となる。また、計算の基準となる期間についても、現行の12カ月から24カ月(53歳以上は36カ月)に変更する。同改正は10月1日以降の失業保険登録者にさかのぼって適用される。複数の雇用契約の間に失業期間がある場合、失業期間も含めた日数で除したものが失業保険の基準日額給与額となるため、受給額が減少する。

さらに、経済状況の改善が継続することを前提条件として、12月1日から失業保険の受給資格を得られる最短の就労期間を「4カ月」から「6カ月」に、高額受給者の給付金の減額措置の適用を現行の「8カ月目」から「6カ月目」以降にするなど、厳格化する。

こうした改正は、失業と就業を繰り返す断続的な短期雇用契約の就労者の給付金が、無期限雇用契約者が失業した場合の手当の給付額より高くなることを是正し、長期や無期の雇用契約を促進する目的で、7月1日から施行予定だった。しかし、国務院が「不確実な経済状況では施行を認める状況にない」として、施行を差し止めていた(2021年6月25日記事参照)。

政府は、経済・雇用の状況が新型コロナウイルス危機以前の水準に回復したとして、新たに10月1日付の施行令を公布し、労組は再度、同施行令の差し止めを求めて提訴していたが、今回、国務院は「労働市場と経済状況が大幅に改善しており、改正政令の施行を阻止する理由がない」と判断した。

労使団体で運営する失業保険団体の全国商工業雇用組合(UNEDIC)が2021年4月に発表した試算によると、2021年7月から2022年6月までの失業手当の受給者を280万人として、その41%の115万人の1日当たりの受給額が新たな計算方法により、平均で17%減額される一方、受給期間は平均で11カ月から14カ月へ3カ月長くなる。また、新型コロナ危機前の経済状況に戻れば、失業保険改正により約23億ユーロの給付削減につながるとしている。

国務院の今回の決定に対し、フランス最大の労組であるフランス民主労働総同盟(CFDT)は「不安定雇用者を犠牲にして2年間で43憶ユーロを節減するという非常に不公正な改正だ。改正は差し止められなかったが、CFDTにとってこの件は終了したわけではない」とのコミュニケを発表した。主要労組は国務院に対し、失業保険改正の正当性について本案審理による提訴を行っており、改正をあくまでも阻止したい意向だ。

(奥山直子)

(フランス)

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