低排出車や低排出技術開発への投資を加速

(オーストラリア)

シドニー発

2021年11月11日

オーストラリアのスコット・モリソン首相は11月9日、低排出車の普及を加速するため、「未来燃料・車両戦略(Future Fuels and Vehicles Strategy)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。翌10日には、低排出技術の開発に対する投資を促進するため、10億オーストラリア・ドル(約835億円、豪ドル、1豪ドル=約83.5円)のファンドを設立すると発表した。モリソン首相は2050年までにネットゼロを目指すと発表したばかりで(2021年10月27日記事参照)、課税などで国民や企業に負担を強いるのではなく、低排出技術への投資によって温室効果ガス排出削減を目指す方針をあらためて強調したかたちとなった。

未来燃料・車両戦略については、2021年2月にディスカッションペーパーを公開しており(2021年2月12日記事参照)、産業界などが提出した意見を踏まえ、今回の発表に至った。同戦略では、再生可能エネルギー庁(ARENA)のファンドへ新たに1億7,800万豪ドルを拠出し、総額2億5,000万豪ドルを用いて、電気自動車や水素燃料電池自動車の充電・充塡(じゅうてん)インフラ、長距離輸送用大型車や小型商用車、家庭用スマート充電器への投資を行うとしている。

10億豪ドルの「低排出技術商業化ファンド(Low Emissions Technology Commercialisation Fund)」については、連邦政府と民間投資家が5億豪ドルずつ拠出し、クリーンエネルギー金融公社(CEFC)を通じて、新たな低排出技術を開発する発明家やスタートアップを支援する方針となっている。

オーストラリア電気自動車協会(EVC)が公表しているバッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の国内販売台数は、2020年通年で6,900台だったのに対し、2021年上半期は8,688台と過去最高を記録しており、連邦政府は「既に多くの国民が低排出車への切り替えを選択している」と評価した。一方で、EVCは「連邦政府の戦略は、購入補助金や税制優遇措置はおろか、欧米が既に導入している燃費基準すら設定しておらず、電気自動車の普及を促進するための最も重要で効果的な対策が含まれていない」と批判した。

(住裕美)

(オーストラリア)

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