政府の未来燃料戦略、低排出車の普及を促進

(オーストラリア)

シドニー発

2021年02月12日

オーストラリア連邦政府は2月5日、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)、水素やバイオ燃料を利用する燃料電池自動車(FCV)などの低排出車に関する政府の方針となる「未来燃料戦略(Future Fuels Strategy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」のディスカッション・ペーパーを公表した。

連邦政府は2020年9月、温室効果ガスの排出削減に寄与する次世代技術の開発を推進する方針を打ち出した(2020年9月25日記事参照)。その中でEVやFCVの活用促進を重点政策の1つに定めており、今回の戦略はその一環となる。

この戦略では、低排出技術の利用・展開を促進し、消費者により多くの選択肢を提供するため、5つの優先分野として、(1)EVやFCVの充電・充塡(じゅうてん)インフラの整備、(2)商用車での低排出技術の利用促進、(3)低排出車に関する情報へのアクセス改善、(4)EV充電需要を踏まえた電力網の管理、(5)国内での製造やイノベーションの支援を掲げている。

なお、本ペーパーは低排出車購入に対する補助金の提供については、費用対効果が見込めないと結論付けている。連邦政府によると、従来のガソリン車とEVの間における購入から廃棄までの総保有コストの差異を埋めるには、車種や用途によるものの、最大約8,000オーストラリア・ドル(約64万8,000円、豪ドル、1豪ドル=約81円)の費用が必要となる。これは、二酸化炭素(CO2)排出削減にかかる費用に換算すると、1トン当たり最大747豪ドルとなる。一方、国内で普及が進んでいるHVでは、総保有コストの差異はほとんどなく、CO2排出削減の費用は1トン当たり3.6豪ドルだという。こうしたことから、消費者が低排出車を選択することを可能とし、自発的な導入を支援する方針が最善だと説明している。

これを受けて、オーストラリア電気自動車協会は「EVへの移行を加速するため、世界各国で購入補助のインセンティブが提供されているにもかかわらず、連邦政府の判断は非常に残念だ」と表明した。

ディスカッション・ペーパーに対する意見提出は4月2日まで、産業・科学・エネルギー資源省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで受け付けている。

(住裕美)

(オーストラリア)

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