ブラジルがアルゼンチン産遺伝子組み換え小麦の輸入承認、反発の声も

(アルゼンチン、ブラジル)

ブエノスアイレス発

2021年11月25日

アルゼンチンの農業バイオテクノロジー企業ビオセレス・クロップ・ソリューションは11月11日、遺伝子組み換え小麦「HB4小麦」の輸入をブラジルの国家バイオ安全技術委員会(CTNBio)が承認したと発表した。現地報道などによると、CTNBioが承認したのは小麦粉のみで、種子などは対象外だ。

HB4小麦は、ビオセレスとアルゼンチン国家科学技術研究会議(CONICET)、国立リトラル大学が18年かけて共同開発したもので、乾燥に対する耐性と除草剤グルホシネート・アンモニウムに対する耐性の2つの特徴を持つ小麦とされる。2020年10月にアルゼンチン農牧漁業省はHB4小麦の商業化を許可していたが、アルゼンチン産小麦の最大の輸出先であるブラジルがHB4小麦の輸入を許可するまで国内での商業化を控えることとなっていた。

ビオセレスは「世界が地球温暖化の大きな問題に直面している中、70億人以上の人々に食糧を供給するのはますます困難になる。世界各国の化学者や企業はこれら気候変動の影響を軽減するために技術を用いた解決策を模索している」とし、ブラジルの承認は「ビオセレスとアルゼンチン農業を世界の最先端に位置付ける画期的な出来事」と歓迎した。同社によると、アルゼンチン国内では既に約5万5,000ヘクタールの遺伝子組み換え小麦が実験的に栽培されている。

しかし、国内の一部の農業者団体や環境保護活動家、消費者などはこれら遺伝子組み換え製品の開発に批判の声を上げている(2021年6月3日記事参照)。ブラジル側でも同様な批判があり、11月11日付現地紙「エル・クロニスタ」によると、ブラジル小麦産業協会(Abitrigo)は、CTNBioの承認を見直すようジャイール・ボルソナーロ大統領に要請しているとの声明を発表した。Abitrigoは声明で「過去20年間、国際市場が強く反発しているにもかかわらず、ブラジルが遺伝子組み換え小麦の使用を承認する世界初の国となるのは残念でならない」と述べている。

専門家などによると、世界では遺伝子組み換え大豆やトウモロコシ栽培は主流だが、これらは主に飼料として使用されている。一方、遺伝子組み換え小麦は主にヒトが直接摂取するため、抵抗が大きいとされる。

(山木シルビア)

(アルゼンチン、ブラジル)

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