南ア政府、新型コロナの新たな変異株の発見公表、調整された警戒レベル1は継続

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2021年11月29日

南アフリカ共和国のジョー・ファーラ保健相は11月25日、同国で新型コロナウイルスの変異株「B.1.1.529」が発見されたと発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。これを受け、世界保健機関(WHO)は翌26日、今回の変異株を「オミクロン」と名付け、最も危険で要注意とされる「懸念される変異株(Variants of Concern、VOC)」に指定した。

南アのシリル・ラマポーザ大統領は28日に国民演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行い、オミクロン株の発見と、過去1週間のハウテン州を中心として起こっている急激な感染増は、時期が一致しており、オミクロン株による可能性が高いことを示唆した。このまま感染が拡大すれば、12月上旬には感染の第4波が到来するとの専門家の予測にも言及した。

一方で、同日招集された国家コロナウイルス評議会では、「調整された警戒レベル1」(2021年10月4日記事参照)の継続を決定した。大統領は、オミクロン株についてわかっていない部分も多いとした上で、国内の監視体制の強化によって新たな変異株をいち早く発見することができるため、オミクロン株は過去の株より多くの変異が起こったものであることや、既存の検査で感染の有無を確認できること、デルタ株やベータ株と直接のつながりのないことなど説明した。過去の状況とは異なり、南ア国内では現在、ワクチンは不足しておらず、成人人口の35.6%が2回のワクチン接種を完了するなど接種率は増加傾向にある。また、12歳以上の国民も無料で接種可能だ。大統領は、ワクチンはこれまでも感染率の抑制に効果的だったとして、今後、ワクチン接種率のさらなる引き上げや、マスク着用や換気などの基本的な予防策を徹底することにより、感染拡大の危機を乗り切る意向を示した。今後数日間、陽性率や入院状況を注視した上で、1週間後に対策の見直しが予定されている。なお、大統領は、オミクロン株発見に伴う諸外国の渡航禁止措置について、感染国の経済にさらなるダメージを与える不当なものだと批判した。

南アの感染状況は、10月中旬まで1日当たりの新規感染者数は平均300人程度だったが、10月17日の週から1日約600~900人弱に増加し始め、24日に入って1,000人を超え、25日に2,465人、26日2,828人、27日には3,220人となった。27日の感染者のうち、2,629人がヨハネスブルクのあるハウテン州での感染者となっている。

今回の発表を受け、各国が南ア滞在者に対する入国規制を強化している。いち早く動いた英国は、26日正午以降、南アをはじめとする5カ国からのフライトを一時停止し、これらの国から帰国した英国人旅行者に隔離措置を取ると発表した。26日時点でカタール航空、エミレーツ航空、ルフトハンザ航空、KLMオランダ航空、エールフランス、シンガポール航空が既に南ア発着便を見合わせており、在南アの日本企業駐在員らの移動にも影響が出ている。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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