香港政府、2021年成長率予測値を前回予測上限値に迫る6.4%に設定

(香港)

香港発

2021年11月16日

香港特別行政区政府は11月12日のプレスリリースで、2021年通年の実質GDP成長率の予測値を6.4%に修正した。香港政府は8月時点では5.5%~6.5%と予測しており、その上限値に近い修正となった。

香港政府の経済顧問の欧錫熊氏は今回の予測値について「域内の新型コロナウイルス感染を引き続き抑制できれば、香港経済は第4四半期(10~12月)も安定した成長が見込まれる。また、第3四半期(7~9月)までの実績も踏まえ、通年での予測値を8月時点での予測の上限値に近い6.4%とした」と説明した。また、欧氏は香港経済に影響を及ぼす足元の世界情勢について「世界経済は引き続き回復途上にある。しかし、新型コロナウイルスのデルタ型変異株による感染拡大事例の増加や、多くの地域におけるサプライチェーン上のボトルネック発生を受けて、回復の勢いには幾分弱まりもみられる。こうした情勢が香港の貨物輸出に影響を及ぼす可能性がある」と分析。さらに「エネルギーと商品価格の上昇や、米国や欧州のインフレ率上昇が主要国の中央銀行の金融政策の方向性に不確実性をもたらしている。米中関係や地政学的情勢にも注意が必要」と指摘した。

オランダに本拠を置くING銀行の中国担当エコノミストのアイリス・パン氏は、11月13日付の「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙で、「香港政府のGDP成長率予測の修正値は予想の範囲内」とコメント。また、パン氏は、米国と欧州のインフレリスクの高まりの影響に関し、「アジア太平洋地域に劇的な影響を及ぼすことはないだろう」との見解を述べた。

なお、香港政府は同日、2021年第3四半期の実質GDP成長率の確定値が前年同期比5.4%だったと発表した。11月1日に発表した速報値(2021年11月5日記事参照)からの修正はなかった。ただし、需要項目別では、個人消費支出が速報値の7.0%増から0.1ポイント上昇して7.1%増となった。

(野原哲也)

(香港)

ビジネス短信 3070cab4d880c429