サウジアラビアのビジネス界がレバノンとの取引停止を呼び掛け

(サウジアラビア、レバノン)

リヤド発

2021年11月08日

リヤド商工会議所およびサウジアラビア商工会議所連盟のアジュラーン・アルアジュラーン会頭は11月4日、自身のツイッターで、全てのサウジアラビアのビジネスパーソンや企業に対し、レバノンとの全ての商取引および経済取引を停止するよう呼び掛けた。

その背景として、2021年8月にレバノンのジョージ・クルダーヒー情報相が、入閣前のテレビインタビューでサウジアラビアのイエメン内戦への介入を批判するコメントをしたことを受け、サウジアラビア政府は10月29日、駐レバノン大使を召還するとともに、在サウジアラビア・レバノン大使の48時間以内の国外退去、レバノンからの輸入停止、サウジ市民のレバノン渡航禁止を発表していた〔10月29日付サウジアラビア国営通信(SPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。

今回の措置に先立ち、サウジアラビア政府は2021年4月25日以降、レバノンからの生鮮野菜・果実輸入が薬物密輸の隠れみのになっているとして、同製品の輸入を停止していた。両国間の外交問題が、レバノンとのビジネス活動全体へ波及することとなった。

輸入の停止のみを発表した政府に対して、ビジネス界が一歩進んで、取引全体の自粛を呼びかけたことは、ビジネス界の能動的な自粛行動にも見える。しかし背景には、イランを後ろ盾とする政治・軍事組織ヒズボラがレバノン国内で影響力を拡大しつつあることへの懸念や、同じくイランから支援を受けるとされるイエメンのフーシ派による連日のサウジアラビアへのドローン攻撃など、2国間を超える域内の事情があるとみられる。政治問題に端を発して、サウジアラビアのビジネス界が自ら特定の国との取引停止に言及するのは、トルコに続く措置となった(2020年10月13日付地域・分析レポート参照)。

サウジアラビア中央銀行によると、2020年のサウジアラビアのレバノンからの輸入は、9億4,800万リヤル(約284億4,000万円、1リヤル=約30円)で、野菜・果実など調製品、ナッツ類、穀物・穀粉・ミルク調製品、ココア・同調製品などの食品類が約3割を占める(注)。サウジアラビアの対レバノン輸出は、6億4,700万リヤルで、エチレン、オレフィン、プロピレンなとの基礎原料、石油・歴青油が約5割を占める。

(注)貿易品目の内訳については、輸出入ともにグローバル・トレード・アトラスから抽出。

(柴田美穂)

(サウジアラビア、レバノン)

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