欧州委、企業の財務や持続可能性関連データの一元化システムを提案

(EU)

ブリュッセル発

2021年11月29日

欧州委員会は11月25日、EU単一市場の主要要素の1つである資本の自由移動を強化するための政策パッケージを提案した(プレスリリース)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。欧州委が2020年9月に提案した「資本市場同盟行動計画」(2020年9月25日記事参照)の中で、同年12月にEU理事会(閣僚理事会)が優先課題として2021年中の実施を欧州委に指示した政策(2020年12月7日記事参照)などを取りまとめたものだ。パッケージでは、今後の資本市場同盟の取り組みや方向性を示したコミュニケーション(政策文書)とともに、以下の法案を提案した。

  • 欧州単一アクセスポイント(ESAP)設立規則案
  • 金融商品市場規則の改正案
  • 欧州長期投資基金規則の改正案
  • オルタナティブ投資ファンド運用者指令の改正案

各法案は今後、EU理事会と欧州議会で審議される。

情報アクセスを改善してグリーン・デジタル投資の拡大目指す

この中で、ESAP設立規則案が唯一、新規の法令案となっている。欧州委の行動計画では、投資家が企業の財務情報や持続可能性関連の情報にアクセスできるEUワイドのプラットフォーム構築を第1の行動目標に掲げていた。情報へのアクセスを改善することによって、投資家が中小企業を含むEU企業やEUの投資商品に出資しやすい環境を整備し、EUが推進するグリーン化・デジタル化に必要な投資を誘導するのが狙いだ。提案によると、ESAPは、企業に対して新たに追加的な情報の提出を求めるものではなく、各国の当局に報告された情報を一元化する仕組みとなる。アクセスポイントの整備は欧州証券市場監督局(ESMA)が行う。ESAPに集約される情報は、ESAP設立規則案の付属書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)にリスト化された各EU規則と指令に基づいて報告が求められている内容となる。規則案に基づけば、ESAPは2024年1月1日より稼働することとなっている。

金融商品市場規則の改正も、投資家の情報アクセスを改善する目的から、EUの各証券市場における株式、債券、上場投資信託、デリバティブに関する取引価格などのデータを集約した「欧州統合テープシステム」を構築することが柱となっている。

欧州長期投資基金は、2015年に施行された規則に基づき、インフラプロジェクトなどへの長期投資を呼び込むファンドの規制枠組みが整備されたものの、欧州委は十分に活用されていないと判断。出資金額の下限を撤廃するなどの見直しを通じて、小口の個人投資家などを含む幅広い投資を呼び込む意図がある。

(安田啓)

(EU)

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