2021年度の米財政赤字は2.8兆ドル、前年度に次ぐ2番目の大きさ

(米国)

ニューヨーク発

2021年10月26日

米国財務省と行政管理予算局(OMB)は10月22日、2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の財政収支(実績見込み)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、同年度の財政赤字が2兆7,720億ドル、GDP比で12.4%になったことを明らかにした。赤字額は2020年度の3兆1,320億ドル、GDP比15.0%に次ぐ、過去2番目の大きさ。2021年7月に公表された議会予算局(CBO)の見通しでは、2021年度の財政赤字は約3兆ドル、GDP比13.4%だった(2021年7月6日記事参照)。

2021年度の歳出は6兆8,180億ドルで、前年度の6兆5,520億ドルから4.1%の増加。トランプ前政権時の経済対策ならびにバイデン政権の米国救済計画の実施により、新型コロナウイルス対策関連の支出が約2兆8,000億ドル拡大したことが響いた(2021年1月4日記事3月16日記事参照)。一方で、歳入については4兆460億ドルで、前年度の3兆4,200億ドルから18.3%増加した。経済再開が進んだことにより、就業者数が前年度より増加し、所得税が大きく増加したことや、企業収益も改善し、法人税が増加したことが歳入増の主な寄与要因となった。

7月に公表されたCBOの見通しでは、2022年度の財政赤字は約1兆2,000億ドル、GDP比4.7%とされているが、これには現在議会で調整中の超党派インフラ計画、3兆5,000億ドル規模の投資計画は含まれていない。この投資計画は2兆ドル程度に縮小される見込みだが、ジョー・バイデン米国大統領は、当初大きな財源として見込んでいた法人税増税について、「計画には含まれないと思う」と発言しており(CNBC10月21日)、不足する財源が国債などで賄われる場合は大きな財政赤字を発生させることになる。超党派インフラ投資計画についても、今後10年間で2,561億ドルの財政赤字を発生させると見込まれており(2021年8月10日記事参照)、2022年度も、2020年度や2021年度と同規模の財政赤字が発生する可能性がある。2021年10月7日には、連邦政府の債務上限を一時的に引き上げる法案が可決され、直近の資金需要への対応措置を講じたものの(2021年10月8日記事参照)、その際に民主党と共和党は激しく対立している。ナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州)は超党派インフラ計画と投資計画の両計画について、今週中にも可決したいと述べているが(ロイター10月24日)、それぞれどの程度の予算が手当されるかについては、両計画の審議後に控える債務上限引き上げへの対応とともに、注視する必要がある。

(宮野慶太)

(米国)

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