欧州委のエネルギー価格高騰対応策、産業界はおおむね歓迎も一部に不満の声
(EU)
ブリュッセル発
2021年10月15日
欧州委員会が10月13日に発表したエネルギー価格の高騰への対策(2021年10月14日記事参照)について、欧州の各産業団体などは同日、声明を発表した。
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は、10月21~22日に開催される欧州理事会(EU首脳会議)を前に、同理事会のシャルル・ミシェル常任議長へ宛てた書簡を公開。その中で、今回の欧州委の対策は「加盟国がEUのルールを順守しながら、短期的にエネルギー価格の高騰に対応できる」もので「重要な一歩だ」と評価しつつも、各国政府の措置によって産業競争力が損なわれるなど、単一市場で混乱が起きないことが重要だとした。
欧州消費者機構(BEUG)は、欧州委の対応策に「消費者への直接支援」や「エネルギー貧困層の保護」「事業者の一方的な値上げといった不公正な商慣行から消費者を保護するため規制監視の強化」が盛り込まれたことから、「消費者中心の勧告だ」と評価する声明を発表し、各加盟国に対して早急な対応と施策の実施を求めた。また、欧州は化石燃料への依存や家計に直結する世界市場での価格変動の影響から脱することが必要と指摘し、再生エネルギーへの移行を加速させるべきだと主張した。
各電力部門からも歓迎や不満の声が上がる
風力発電産業団体のウィンド・ヨーロッパは、欧州委が再生可能エネルギーの普及拡大に向けて入札や許可プロセスの迅速化・簡素化へ取り組む姿勢を示したことや、また「生産コストが低いエネルギーの1つ」だとして、欧州委が電力価格の安定における風力発電の重要性を強調したことを歓迎する声明を発表した。一方、欧州原子力フォーラム(FORATOM)は原子力の扱いに不満を示す声明を発表した。現在のエネルギー需要の増加を、「新型コロナウイルス危機」からの経済活動の再開に伴う短期的なものと捉えるのは誤りで、欧州経済の脱炭素化を進めるに当たって電力需要は劇的に増える、と指摘。再生可能エネルギーが利用不可能な時、「最低限必要な電力を調整しながら供給できる」「低炭素」な原子力エネルギーへの支援を訴えた。また、欧州委が持続可能な経済活動の分類基準を定めたタクソノミー規則の補完的な委任規則(2021年4月22日記事参照)に言及したことに触れ、「専門家は、原子力は概してタクソノミーに合致すると結論付けている」として、原子力が欧州グリーン・ディールにおいて、天然ガスとともに移行期のエネルギーとしてより公正に扱われるためにも委任規則案の早期公表を求めた。
(滝澤祥子)
(EU)
ビジネス短信 e64fd7c1bc04a0e2