輸出競争力の向上目指し、2021-2025国家貿易ブループリント策定

(マレーシア)

クアラルンプール発

2021年10月29日

マレーシアのイスマイル・サブリ首相は10月25日、貿易面の競争力を強化するための「国家貿易ブループリント」を発表した。第12次マレーシア計画(12MP、2021年10月12日記事参照)で掲げた目標達成に向け、2021年から2025年を対象に既存の政策を補完する。国際貿易産業省(MITI)の委託を受けたマレーシア貿易開発公社が策定した。

ブループリントでは、貿易分野の多角的な構造改革を通じて、横断的な輸出エコシステムを構築することを目指している。具体的には、8つの戦略的指針(輸出エコシステムの強化、輸出能力向上、マレーシアの輸出の強みの増進、技術とECを通じた成長増、市場アクセスの促進・拡大、マレーシアのブランド・製品の売り込み、投資と輸出の多角化、持続可能性とイノベーションの追求)と、各指針に関連した計40の提言から構成される。官民の専門家による作業部会がこれら指針を実行する。

ブループリント策定の背景には、輸出競争力低下への懸念がある。マレーシアは2004年時点では世界の輸出上位18位に付けていたが、2010年以降は23~25位の間で推移、2019年には26位まで後退し、台頭目覚ましいベトナム(2019年には22位)や、タイ(同25位)にその順位を抜かれた。また、世界経済フォーラムによる国際競争力ランキングでも、技術スキル、財務、ビジネスのダイナミズム面でのパフォーマンス低下により、2018年の25位から2019年には27位に順位を落とした。ブループリントではこうした事情に鑑み、輸出力を高めるためには貿易関連の取り組みの集約化や効率化、あるいは持続可能性を維持するための国際トレンドの活用が必要との認識を示している。

発表に際してイスマイル・サブリ首相は、貿易円滑化や市場アクセスの改善、デジタル化、新技術の導入、投資とブランディングの強化などを通じて、輸出産業の構造改革に取り組む意向を示した。また「ポスト・コロナの世界で経済回復を広く後押しするには、国際貿易の持続的発展が不可欠」「新型コロナウイルスはマレーシアの輸出セクターにも大きな打撃を与えた。輸出を維持し、中小企業も含む国内企業が輸出活動を継続すべく支援することが最優先」とも述べ、国際貿易におけるマレーシアの能力向上に努める考えを表明した(注)。

(注)首相スピーチ全文は首相府ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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