第12次マレーシア計画、経済再生や持続可能性の追求が柱

(マレーシア)

クアラルンプール発

2021年10月12日

マレーシアの次期5カ年計画である「第12次マレーシア計画」の議会審議が9月27日から始まった。政府関係機関の再建などを中心に、今後5年間で投じる開発予算は、4,000億リンギ(約10兆4,000億円、1リンギ=約26円)とされ、前回の第11次計画から大幅に増額し、過去最多となる見込みだ。

新型コロナ禍からの回復と経済成長に力点

国家開発の新たな中期5カ年計画である「第12次マレーシア計画(以下、12MP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、当初2020年8月に議会へ提出の予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大や首相交代を受け、2度にわたって延期されていた。12MPは、2019年に発表された、2030年までの格差是正を目指す「シェアード・プロスペリティ・ビジョン2030(以下、SPV2030)」(注)(2019年10月18日記事参照)の下、包摂的で持続可能な国家形成を目標に据えている。12MPはSPV2030の前半(2021~2025年)をカバーする中期計画との位置付けで、最終年までにマレーシアの高所得国入りを目指す。

3本柱とそれを支える4つの政策から構成

12MPでは、(1)経済の再生、(2)治安・福祉・包摂性の強化、(3)持続可能性の追求、の3つの柱を軸とし、これを4つの政策(将来に向けた人材育成、技術導入の加速と技術革新、コネクティビティ拡大と交通インフラ、公共サービスの強化)が下支えする構成だ。この3本柱と4つの政策にひもづくかたちでさらに、「ゲームチェンジャー」と称する14の具体的項目が掲げられている(添付資料参照)。

イスマイル・サブリ首相は、就任後初となるメディアへの対面インタビュー(「スター」紙10月3日)で、12MPを通じて「新型コロナ禍」からの回復に向け重点的な支援を行いつつも、経済成長を軌道に乗せたい考えを示した。そのためには、先端技術を用いて高付加価値な製品・サービスを生み出すことに焦点をシフトさせるとともに、国民の福祉確保や地域間格差の縮小に尽力する必要があると強調した。また、環境を保全しつつ持続可能な開発を実現することの重要性にも触れた。

(注)マハティール元首相が2019年に発表した、10年間の国家開発計画。2030年までに「公正かつ公平な分配による持続可能な成長」を達成することを目的としている。同首相が1991年に提唱した「ビジョン2020」の後継に当たる。

(吾郷伊都子、エスター頼敏寧、関淑怡)

(マレーシア)

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