AEO(認定事業者)制度の運用状況は円滑

(インドネシア)

ジャカルタ発

2021年10月19日

インドネシア関税総局のウェコ・ロキタルジョ通関技術局AEO担当課長は10月7日、ジェトロが主催したAEO(Authorized Economic Operator:認定事業者)制度セミナーで、2014年に導入した同制度の最新の運用状況や利用方法について講演を行い、日系企業の利用促進を呼び掛けた。講演では、AEOの認定を受けた事業者には、迅速通関やクライアントマネジャーへの優先相談のほか、税務監査の前に還付を受けられるなどのベネフィットが与えられることを紹介した。優良事業者であるとの良い評判を得ることで、顧客の信頼獲得や事業拡大につながる、いわゆる「無形のベネフィット」がある点にも言及した。

AEO制度は、関税法令を順守し、貨物のセキュリティー管理とコンプライアンスがしっかりしている優良事業者に対し、通関手続きの簡素化などの便宜を与える仕組みで、97カ国が導入済みだ。インドネシアは2014年に導入した(添付資料「根拠法令邦訳」参照)。AEO事業者数は、2017年に44社だったが(2017年8月14日記事参照)、関税総局によると、現在は138社まで増えている。このうち日系企業は30社超ある。今回のウェビナーに先駆けて、ジェトロがAEO取得済みの日系企業にヒアリングしたところ、「AEO制度の利用により、迅速な通関ができている」「税関のクライアントマネジャーに相談し、迅速に問題解決できた」など、同制度を有効活用できているとする声が聞かれた。

関税総局のアグス・スジェンドロ通関技術局AEO認証係長も講演で、新たに同制度を活用したい事業者などがAEOへの理解を深めるための相談窓口「コーチングクリニック」を紹介し、「AEOについて不明な点があればいつでも相談してほしい」と呼びかけた。

次の課題は通関業者など利用者の裾野拡大か

インドネシアでは、輸出入者だけでなく、通関業者や運送業者、倉庫業者などその他のさまざまな業種にもAEOのステータスが与えられる。しかし、迅速通関などのベネフィットを受けている輸入者と比較すると、その他業者はベネフィットを実感しにくい状況だ。こうした状況を反映し、セミナー終了後にジェトロが実施したアンケート調査では、「AEOになりたいか」との質問に対し「もう少し様子を見たい」との回答が55社中4割で最も多かった。

関税総局によると、商業省や検疫所、州政府など、輸出入に関わる他の規制当局との間で、その他業者にどのようなベネフィットを与えられるか検討中という。138社あるAEOのうち30社にも満たないその他業者の裾野が今後どう広がっていくか注目される。

(佐々木新平)

(インドネシア)

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