ペロシ米下院議長、10月末までの超党派インフラ法案成立を目指すと表明

(米国)

ニューヨーク発

2021年10月05日

米国下院のナンシー・ペロシ議長(民主党、カリフォルニア州)は、調整が難航している超党派インフラ法案(2021年8月26日記事参照)について、10月末までに下院での成立を目指すと表明した。この法案は9月27日の成立を目指していたが、民主党内の調整が難航し、9月30日に採決を延期したものの党内合意に至らず、10月1日に再延期、ジョー・バイデン大統領自ら議会に赴いて説得に当たったが、合意にできずに採決は再々延期になっていた。

民主党内の対立の原因は、もう1つの経済対策法案である3兆5,000億ドル規模の投資計画案(2021年7月16日記事参照)にある。本計画は上下両院で審議中だが、中道派は、同計画の規模が大き過ぎ、インフレを加速させると主張し、勢力が与野党で拮抗(きっこう)している上院のジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)は、インフラ法案の下院通過を条件として、投資計画の規模が1兆5,000億ドル程度であれば賛成できると発言している(ブルームバーグ10月3日)。一方で、党内左派は規模縮小に強く反対し、上院で投資計画を通過させないのであれば、インフラ法案の下院での採決に欠席や反対も辞さない姿勢を取る。インフラ法案は民主党からは中道派議員が参加して作成した経緯があり、両者の攻防が続いている。

両者の妥協の兆しも見える。民主党左派のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(ニューヨーク州)はCBSの番組に出演し、投資計画の規模縮小について「(同計画の対象期間である)10年間を5年間に短縮することも1つのアイデアだ」として、中道派に譲歩の姿勢を示唆した。一方、下院で100人程度の民主党左派グループのリーダーであるプラミラ・ジャヤパル議員(ワシントン州)は、マンチン議員提示の1兆5,000億ドル程度への規模縮小について「あり得ない」と一蹴し、「(同計画の最終的な規模は)1兆5,000億~3兆5,000億ドルの間で落ち着くだろう」と発言している(政治専門誌「ポリティコ」10月3日)。こうした状況を踏まえてか、バイデン大統領は同計画の規模に関し、1兆9,000億~2兆3,000億ドルへの削減を受け入れるよう下院の左派議員に迫ったとされる。また「(同計画の成立が)6分後か6日後か6週間後かは重要でなく、われわれはとにかく成し遂げなければならない」とも発言し(CNN10 月1日)、ペロシ下院議長とは異なって、タイムラインにこだわらない姿勢も見せており、いまだ両経済対策の成立時期が見通せない状況だ。

議会では、喫緊の課題として、与野党間で対立が先鋭化している債務上限対応の問題も抱えている(2021年10月1日記事参照)。難航する共和党との調整状況を踏まえて、民主党の上院院内幹事のディック・ダービン議員(イリノイ州)は「共和党はフィリバスター(議事妨害)で脅しをかけているが、われわれは〔財政調整措置(注)で〕単独で採決する用意がある」と発言している(ブルームバーグ10月3日)。民主党上院院内総務のチャック・シューマー議員(ニューヨーク州)も今週中に採決する意向を見せており、債務上限対応について民主党単独での採決にかじを切ろうとしている。同計画の規模縮小は、債務上限の金額にも密接に関わってくるだけに、民主党内だけでなく、与野党間の攻防にもさらに注意が必要だ。

(注)上院では通常、法案可決にはフィリバスターを抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となる。ただし、歳出・歳入・財政赤字の変更に関する法案については、財政調整措置(リコンシリエーション)を利用し、過半数での採決が可能。賛否が50票同数の場合、議長を務める副大統領の1票で採決となる。同措置は1会計年度につき1度のみの使用が慣例となっている。

(宮野慶太)

(米国)

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