デジタル時代の人材育成の在り方議論、ASEAN-BAC主催セミナー

(ASEAN、ブルネイ)

ジャカルタ発

2021年10月11日

ASEANビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC、注)は9月29日、「Skills for a Digital Age」(デジタル時代におけるスキル)と題したオンラインセミナーを開催した。官民の有識者がASEANにおけるデジタル時代の人材育成のあるべき姿について議論を行った。

ブルネイのハムザ・スライマン教育相は基調講演で「第四次産業革命やソサエティー5.0に対応するため、学校でクリティカルシンキングや、協働(コラボレーション)、人格教育なども教育する必要がある」としつつ、「教育者もデジタルスキルを習得する必要がある」と指摘した。また、人工知能(AI)やデータ分析などにはモラル教育も必須になるとし、包括的な教育の必要性を訴えた。

「将来の仕事の在り方」のパネルディスカッションに登壇したサティビンダー・シンASEAN副事務総長(ASEAN経済共同体担当)は、9月に行われたASEAN経済大臣会合で、デジタル化の推進を掲げる「バンダル・スリ・ブガワン・ロードマップ(BSBR)」が承認されたことを紹介し、ASEANもデジタル時代の生涯学習やスキルの発展に向けた投資を促していくとした(2021年9月16日記事参照)。ブルネイのバイドゥリ銀行のマニュエル・ブレンズ副CEOは、デジタル時代はリスクがある一方、チャンスもあると指摘し、具体例として、QRコードを使って中小企業も大きな投資をすることなく電子決済を利用し、新たな市場を開拓できる可能性あるとコメントした。

「デジタル時代に向けたスキル」のパネルディスカッションでは、ブルネイLNGのスザンヌ・クーガン副社長が同社のデジタル化の例として、危険な場所で人ではなくロボットを活用していることを挙げ、社内でもSTEM(科学、技術、工学、数学)教育をはじめ、デジタル技術の人材育成プログラムを実施していると述べた。

ブルネイASEAN-BACは新型コロナウイルス禍からの回復を目指し、デジタルを活用し、ASEAN域内の医療従事者や関連インフラの機能強化を目指すとともに、レガシープロジェクトとして、ASEAN域内のデジタル人材の需給ギャップ是正も掲げている(2021年2月8日記事参照)。

(注)ASEAN-BACは、ASEAN各首脳が指名した産業界の代表からなる組織で、ASEAN首脳会合や経済担当相との対話の場で政策提言を行う。

(上野渉)

(ASEAN、ブルネイ)

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