欧州12産業団体、EUに対しマグネシウム供給不足への緊急対応を要請

(EU、中国)

ブリュッセル発

2021年10月26日

ヨーロピアン・アルミニウム、欧州鉄鋼連盟(EUROFER)、欧州自動車工業会(ACEA)をはじめとする欧州の金属工業、金属製品利用業界などの12団体は10月22日、EUに対して、マグネシウムの供給不足への緊急対応を求める共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。マグネシウムは主要な合金材料の1つで、アルミニウム合金、ダイカスト、鉄・スチールなどで広く利用されている。

世界的には年間120万トンの需要があり、そのうち87%が中国で生産され、同国はその過半を輸出している。しかし、2021年9月以降、その世界最大の生産および供給国である中国からの輸出が停止または大幅に減少し、「これまでに例がない規模」で国際的な供給量が減少している。その背景には、中国政府が9月中ごろから電力需給逼迫を理由に、同国企業に対して電力消費量の削減や操業を制限するように要請し、マグネシウム生産を含む企業活動に影響が出ていることがある(2021年10月5日記事2021年10月20日記事参照)。中国からの供給量の大幅な減少によって、中国から輸入されていたマグネシウムへの需要が高まり、その取引価格は1トン当たり1万~1万4,000ドルと記録的な水準になっている。これは、2021年初頭の1トン当たり2,000ドルから数倍も高い価格となっている。

12団体は、EUにおけるマグネシウム需要の95%は中国からの輸入で賄われていることから、世界的な供給不足の影響を特に大きく受けており、欧州のアルミニウム、鉄・スチールを生産する業界やその原材料供給業界だけでなく、自動車、建設、包装といったエンドユーザー業界も含めEUのバリューチェーン全体に影響が及んでいると指摘。価格の高騰により、欧州企業がマグネシウムを含有する原材料を生産・調達することも実質的に不可能に近い水準となっており、また、このままの状況が継続すれば、11月末までに備蓄分が尽き、減産だけでなく、廃業に追い込まれる企業や多くの失業者が出かねないとした。

そこで12団体は、欧州委員会および加盟国政府に対して、短期的な供給不足解消に向け、中国政府に対し即時に働き掛けを行うように要請すると同時に、より長期的な観点でも欧州産業界への影響を緩和するための施策を求めた。

(滝澤祥子)

(EU、中国)

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