燃料不足への予防措置で、エネルギー備蓄施設を設置へ

(シンガポール)

シンガポール発

2021年10月21日

エネルギー市場監督庁(EMA)は10月19日、世界的な燃料不足を受けて燃料備蓄施設の設置など、シンガポールのエネルギー安全保障を確保するための予防的措置を発表した。

シンガポールの発電燃料の約95%はガスで、インドネシアなどからの天然ガスのほか、中東などから液化天然ガス(LNG)を輸入している。EMAは発表の中で、「ガスの国内供給は依然、充分だ」と強調した。その上で、世界的なエネルギーの供給状況を判断した予防措置として、燃料備蓄施設の設置を発表。また、発電各社に対し、それぞれの販売部門が契約した分のガスを確保するよう求めた。

EMAによると、同国の天然ガス調達先であるインドネシア・西ナトゥナ諸島の天然ガス油田の生産段階における問題でガス供給量が減少しており、その状況が2021年末まで継続する見込みだ。また、インドネシアの南スマトラからの天然ガスも、川上のインドネシアの需要増の打撃を受けている。インドネシアからの天然ガス供給量の減少を受けて、発電会社各社は最近、必要なガスを確保するため割高なLNGを追加調達している。

こうした状況を受けて、シンガポール電力卸市場(SWEM)の卸売価格は最近、急騰している。SWEMで取引される電力価格は、需要と供給に応じて30分ごとに価格が設定されている。上掲のシンガポールの天然ガス調達先であるインドネシアの天然ガス生産の減少だけでなく、世界的にも天然ガスと石炭の生産が減少していることから、LNGの国際スポット価格が急上昇している。また、EMAによると、シンガポール国内の電力需要が高まっており、10月12日に電力需要が過去最高水準の7,667メガワット(MW)に達した。

同国では、2001年から国内電力の小売りの自由化を進め、2018年11月から一般家庭も電力販売会社もしくは電力卸市場から自由に電力を購入することが認められた(2015年11月20日記事参照)。電力卸市場の急騰を受けて、2021年10月に入り、独立系電力販売会社3社が相次いで電力販売の停止に追い込まれている。EMAは今回の発表の中で、「電力卸市場の動向を引き続き注視しており、必要であれば介入を行う」と述べた。同庁は今回の予防措置を2022年3月末までに見直すとしており、電力利用者に対して可能な限り節電をするよう促した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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