9月の米消費者物価、前年同月比5.4%上昇、上昇率は前月からほぼ横ばい

(米国)

ニューヨーク発

2021年10月19日

米国労働省が10月13日に発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した2021年9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.4%上昇、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は4.0%上昇となった。民間予想はそれぞれ5.3%、4.0%だった。8月はそれぞれ5.3%、4.0%(2021年9月15日記事参照)で、消費者物価指数、コア指数ともに前月からほぼ横ばいだった(添付資料図参照)。前月比では消費者物価指数、コア指数それぞれ0.4%、0.2%上昇と、前月の伸び(それぞれ0.3%、0.1%上昇)をわずかに上回った。

品目別では、中古車が前年同月比24.4%上昇しているが、前月比でみれば0.7%低下と前月に続きマイナスになった。そのほか、これまで高い伸びをみせてきた航空運賃は前年同月比0.8%上昇で、行楽シーズンが終わり、伸びが一服している。一方で、新車は同8.7%上昇となり、供給不足を反映して引き続き伸びが高い。また、ガソリンは同42.1%上昇、食料品は同4.6%上昇と、これらも供給不足を背景に高い伸びをみせている(添付資料表参照)。

川上の物価動向をみても、高止まりが続いている。労働省が10月14日に発表した卸売物価指数は前年同月比8.6%上昇と、2010年11月以降で最も高い伸びを記録した。また、経済活動が各国で進んでいる影響などにより、10月の原油の先物価格(WTI)は1バレル80ドルを超えるまで上昇しており、物価下落の傾向はみえない。こうした状況を反映して、ニューヨーク連邦準備銀行が10月12日に発表した調査では、1年後の期待インフレ率の中央値は5.3%と11カ月連続で上昇し、2013年に調査を開始して以来の最高値となった。深刻化する供給不足を和らげようと、バイデン政権は10月13日、ロサンゼルス港など西部の主要港を24時間無休で稼働させることに加え、フェデックスなど民間企業も協力し夜間の勤務時間を延長して対応することを発表し、供給網の強化に取り組もうとしている(2021年10月14日記事参照)。

最近のインフレ傾向を一時的と主張してきた連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長も、長引く物価の高止まりに「今後数カ月は物価の高止まりが続く可能性が高い」と9月28日の議会証言で述べた(CNBC9月28日)。次回11月の連邦公開市場委員会(FOMC)において量的緩和縮小の年内開始が正式に発表されるというのが大方の見方で、次の焦点は利上げ時期がいつかに移りつつある。物価の高止まりが続けば、それを抑えるため、FRBによる利上げ時期が早まるとみられる。エネルギー需要が高まる冬をこれから迎えるだけに、物価の動向がさらに注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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