米下院の共和党グループ、ファーウェイとSMIC向け輸出許可申請の承認状況に関する報告書を公表

(米国、中国)

ニューヨーク発

2021年10月26日

米国下院外交委員会の共和党グループは10月21日、商務省から提出された中国の華為技術(ファーウェイ)と中芯国際集成電路製造(SMIC)向けの輸出許可申請の承認状況に関する報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

商務省の報告書は下院外交委の要請に基づき作成されたもので、2020年11月から2021年4月までの約5カ月間に、同省産業安全保障局(BIS)が扱ったファーウェイとSMIC向けの輸出許可申請の状況をまとめた内容になっている。報告書によると、ファーウェイ向けの許可申請は169件あり、承認が113件(69.3%)、差し戻しが48件(28.4%)、却下が2件(1.2%)で、承認された案件の合計額は約614億ドルとなっている。SMIC向けの申請は206件あり、承認が188件(91.3%)、差し戻しが17件(8.3%)、却下が1件(0.5%)で、承認案件の合計額は約419億ドルとなっている。

ファーウェイとSMICに関して、BISは輸出管理規則(EAR)に基づき、米国の安全保障および外交政策上の利益に反する活動に関与している、または、関与する重大なリスクがある事業体と認定し、それぞれ2019年5月(2019年5月16日記事参照)と2020年12月(2020年12月23日記事参照)にエンティティー・リスト(EL)に掲載した。さらにファーウェイに関しては、EARを一部改正して、特定のEAR対象の技術・ソフトウエアを用いて米国外で直接生産された外国産の製品もEARの対象とした(2020年8月18日記事参照)。これらの措置により、EAR対象の米国製品をこれら2社および指定された子会社に輸出・再輸出・国内移転(みなし輸出・再輸出を含む)する場合はBISの事前許可が必要となり、場合によっては申請をしても「原則不許可」の扱いとなることになっている。しかし、今回の報告書により、期間中に行われた申請の過半が承認されていたことが明らかとなった。

今回の動きを主導した共和党のマイケル・マコール下院外交委少数党筆頭委員は「制裁やその他の手段に加えて、輸出管理は技術や製品が敵対勢力に渡ることを制限するための基盤的なものだ」とした上で、「より透明性が高く厳格な執行を伴う輸出管理が必要だ」との声明を出している。米国議会は、輸出管理の根拠法となる輸出管理改革法(ECRA)が2018年8月に成立して以降も、ECRAが商務省に求める新興技術・基盤的技術の指定作業が遅れているなど危機感を募らせており(2021年6月9日記事参照)、今回の動きもその一環とみられる。

他方、商務省は、ELに掲載された特定の中国企業に関する許可申請データを一定期間のみ切り取って情報公開する仕方は弊害があると指摘している。商務省の広報担当者は、そのような情報公開は「許可申請手続きを政治化し、誠実な企業が同手続きに参加する意欲を削ぎ、BISやその他の行政機関による慎重かつ証拠に基づいた安全保障上の判断を誤って伝え、さらには米国の技術的リーダーシップを損なう」との声明を出している(政治専門誌「ポリティコ」10月21日)。

(磯部真一)

(米国、中国)

ビジネス短信 90f46c98ebfe4980