水素閣僚会議、脱炭素水素の普及に向けた取り組み共有

(世界、日本)

国際経済課

2021年10月05日

経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は10月4日、水素閣僚会議を開催した。同会議は、経済産業省主催の東京ビヨンド・ゼロ・ウィーク 2021のプログラムの1つとして実施されたもので、4回目の開催となった。

前半の閣僚セッションではまず、国際エネルギー機関(IEA)がグローバル水素レビュー2021を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同レポートでは、エネルギーとしてのクリーン水素の普及を加速するために、(1)エネルギーシステムにおける水素の役割に関する戦略とロードマップの策定、(2)脱炭素化されていない化石燃料を低炭素水素に置き換えるインセンティブの提供、(3)水素の生産、インフラ、工場への投資の呼び込み(4)重要な技術が早期に商業化されるためのイノベーションの支援、(5)適切な認証に向けた標準化や規制見直しの5分野で政策提言を行っている。

続いて、参加国・地域の担当相がそれぞれの水素戦略や国外企業との提携を含む水素プロジェクトなどを紹介した(注1)。各担当相は、温室効果ガス(GHG)削減のため水素への需要が高まっている一方、安全な水素利用と市場拡大には低炭素水素の基準や、国際的な関連規制の整備、多国間協力による技術発展などが必要との指摘をした。

国際水素燃料電池パートナーシップ(IPHE)は、エネルギー転換の中心にクリーン水素を位置づける水素戦略の採択国が世界で30カ国以上に上ることや、IPHE参加国だけでもクリーン水素促進のための300億ドル以上の公的資金の投下が公表されていることを紹介した。また、水素の国際取引を促進するため、さまざまな水素製造における共通のカーボンフットプリント(注2)の計算法の検討や、水素取引に関するルールの議論を行っていると紹介した。

水素協議会は、低炭素や再生可能水素の政策に関するベストプラクティスを分析し、実効性がある政策や規制枠組みには、(1)水素をエネルギー戦略と不可分な要素として認識するとともに、水素の国際的商流を見据えた戦略を作成すること、(2)政府が水素に関する長期戦略に加えて、意欲・達成可能性・拘束力のある業種別の中期計画を示すことで、投資家に予見可能性を提供すること、(3)水素による明確な脱炭素化ロードマップの提示を行うことなどを挙げた。

後半の民間セッションでは、水素サプライチェーン、地域水素社会モデル、燃料電池モジュール、水電解に関するパネルディスカッションが実施された。水素サプライチェーンに関するセッションでは、ENEOSホールディングスによる、再エネ由来の水素と大気中の二酸化炭素(CO2)を活用した燃料開発や、ペトロナス(マレーシア)によるグリーン水素とブルー水素生産、日本とオーストラリア協同の液化水素輸送に関するパイロットプロジェクトへの川崎重工業の参画事例の紹介、産業ガスメーカーのエア・リキード(フランス)による液化水素のサプライチェーン構築のための取り組みなどが紹介された。

(注1)各国・地域の水素戦略や脱炭素水素に関する取り組みは、ジェトロの地域・分析レポート特集でも紹介している。

(注2)製品のライフサイクル全体で排出されたGHGをCO2の排出量に換算して商品やサービスに表示するもの。

(柏瀬あすか)

(世界、日本)

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