2020年の出生数、新型コロナ禍で過去34年間で最低水準

(フィリピン)

マニラ発

2021年10月15日

フィリピン人口開発委員会(POPCOM)は10月10日、2020年の出生数は151万6,042人で、過去34年間で最低の水準だったと発表した。同年の出生数は、2019年の167万3,923人から9.43%減少した(「インクワイアラー」紙10月11日)。婚姻数も24万183件と、2019年の43万1,972件から44.4%減少した。

人口開発委員会のアントニオ・ペレス次官は2020年の出生数の減少理由として、(1)婚姻数の減少、(2)女性が新型コロナウイルス禍のため妊娠を延期させたこと、(3)計画外の妊娠を避けるため、避妊を行う女性が増加したことを挙げた。新型コロナ禍で医療システムがダメージを受けている状況下、医療的な観点などから子どもを産むことを避ける意思が明らかとペレス次官はコメントした。

同委員会は2021年も婚姻数や妊娠、出産の減少傾向は継続すると予測している。実際、2021年1月から3月までの出生数は26万8,000件で、統計的なトレンド値である35万件を下回る水準となっている。また、同委員会は、新型コロナ禍により出生の申告・登録に遅れが発生している可能性もあると指摘した。

フィリピンの人口増加率は高い水準にある。統計庁(PSA)の発表によると、2020年5月1日時点の人口は1億903万5,343人で、前回調査時2015年の1億98万1,437人から805万3,906人増加した(2021年7月15日記事参照)。政府は、急激な人口増加によって家計支出や社会保障費の増大といった社会的コストが大きく発生するリスクを警戒し、高い水準にある人口増加率を抑える方針を打ち出している。その一環として、家族計画や避妊について医療機関やコミュニティーなどを通じて普及・啓発を行う「ナショナル・ファミリー・プランニング・プログラム」を2012年から展開している。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

(フィリピン)

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