フィリピン中銀総裁、金融緩和継続の姿勢を表明

(フィリピン)

マニラ発

2021年10月29日

フィリピン中央銀行(BSP)のベンジャミン・ディオクノ総裁は10月21日、「新型コロナ禍」からの経済回復をサポートするために、現行の金融緩和政策を維持する意向を明らかにした(政府通信社10月21日)。今後もインフレ率が上振れしうる環境が続くものの、フィリピン経済は依然として新型コロナウイルスやその他の国外を起因としたショックに対して弱く、金融政策によるサポートを継続する必要がある、とディオクノ総裁は説明した。なお、BSPは2020年11月の政策金利引き下げ以降、過去最低の低金利政策を維持している(注1)。

フィリピンでは2021年に入り、消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)が高い水準にある。2021年1月から9月までの平均インフレ率は4.5%で、政府が目標範囲としている2~4%を上回っている(注2)。BSPが10月21日に発表した「インフレーション・レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(注3)でも、2021年7月から9月までのCPI上昇率は、前年同期の2.5%を超える4.5%と推計された。ただし、価格変動が大きい特定の食品項目とエネルギー項目を計算から除外したコア・インフレ率は3.2%で、安定的な水準になっている。

インフレ率について、国際商品価格の上昇や天候不順、アフリカ豚熱(ASF)の流行長期化によって上振れが続く可能性がある、とディオクノ総裁は指摘した。その上で、供給サイドが起因しているインフレーションについては、政策金利の引き上げといった金融政策ではなく、政府が直接的に供給サイドに働き掛ける措置を取っていく必要がある、とコメントした。

(注1)政策金利の翌日物借入金利は2.0%、翌日物預金金利は1.5%、翌日物貸出金利は2.5%。

(注2)フィリピン政府は物価上昇率の目標範囲を明示し、物価上昇率が範囲内に収まるように金融政策を運営するインフレターゲットを導入している。政府は2021年から2024年まで、年間のCPI上昇率の目標範囲を2~4%としている。

(注3)四半期ごとに発行される同レポートでは、物価動向やマクロ経済状況に関するBSPの分析結果を公表している。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

(フィリピン)

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