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水素生産向け投資は増加も、一層の需要拡大が必要

(世界)

国際経済課

2021年10月06日

国際エネルギー機関(IEA)は10月4日、グローバル水素レビュー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同レポートは、脱炭素の実現に向けた新たなエネルギー源として注目される水素について、その需要や生産の動向に加え、政策、規制、投資、イノベーション、インフラ開発などの進捗状況をフォローするもの。IEAは、クリーンエネルギーへの移行を支えるために水素への投資が増加している一方、普及拡大に向けては、コストの低減やさまざまな産業セクターにおける水素利用を促す政策導入が必要と分析している。

2020年の世界における水素需要量は9,000万トンだった。しかし、多くは化石燃料から生産された水素だったため、その生産過程において、9億トンの二酸化炭素(CO2)排出が生じた。一方、低炭素水素を生産するための電解槽(注1)設備容量が過去5年間で倍増し、2021年半ばに300メガワット(MW)に達した。電解槽については、現在進展中の約350のプロジェクトと、開発の初期段階にある約40のプロジェクトが実現した場合、2030年までに、世界全体で電解槽から年間800万トンの低炭素水素供給が可能になる見込み(注2)。また、今日では16件のCO2回収・有効利用・貯留(CCUS)を組み合わせた化石燃料由来の水素生産プロジェクトが稼働中で、年間70万トンのCO2が回収されているという(注3)。地域別では、欧州が電解設備開発をリードしており、導入済みの設備容量の40%を占めているほか、EUや英国の野心的な水素戦略(2020年7月10日記事2021年8月23日記事参照)を背景に、短期的には最大の市場と分析した。

IEAによると、現在17の政府が水素戦略を策定しており、少なくとも370億ドルの投資が約束されているほか、民間部門による3,000億ドルの投資も公表されている。ただ、多くの政策では低炭素水素の生産に焦点が当てられており、需要喚起への対策が限定的となっている。IEAは、産業および輸送分野における水素の利用拡大には、必要な貯蔵・輸送・充填設備構築を促す、より強力な政策が必要と指摘した。また、IEAは低炭素水素については、化石燃料から生産される水素との価格差(注4)が普及の障壁になっているが、2050年までのCO2排出ネットゼロに向けたロードマップ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでの分析も踏まえ、技術イノベーションによるコスト低下の余地があると期待を示した。

(注1)電気分解を行う装置のこと。水素の生産方法は複数あるが、水の電気分解による生産の際、電解槽を利用する。

(注2)現在進展中の約350のプロジェクトにより、2030年までに世界の電解槽設備容量は54ギガワット(GW)になる見通し。また、約40の開発初期段階にあるプロジェクトの設備容量は合計35GWにのぼる。ただ、IEAの2050年までのCO2排出ネットゼロに向けたロードマップ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、年間約8,000万トンの水素供給が必要になるとしており、これらのプロジェクトが実現した場合でも水素供給は不十分だという。

(注3)CCUSを伴う化石燃料由来の水素生産については、稼働中の16件に加えて50件のプロジェクトが進展中で、これらが実現した場合、水素生産量は2030年までに年間900万トン増加するという。また、地域別では米国やカナダの存在感が強い。

(注4)天然ガスを用いて生産する水素の価格は1キログラム当たり0.5~1.7ドルであるのに対し、CCUSを使用してCO2排出を減らした水素の価格は1~2ドル、再生可能エネルギーを使用した場合は3~8ドル。

(柏瀬あすか)

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