9月のインフレ率が前年同月比10%超、干ばつの影響随所に

(ブラジル)

米州課

2021年10月15日

ブラジル地理統計院(IBGE)は10月8日、代表的な物価指数である拡大消費者物価指数(IPCA)の9月の上昇率が前月比1.16%だったと発表した。9月単月のインフレ率としては1994年の9月以来最も高かった。前年同月比では10.25%となり、ブラジル中央銀行が設定する年間のインフレ目標値(2.25~5.25%)の上限を7カ月連続して、かつ大幅に上回った(添付資料図参照)。

前月比の上昇率を費目別にみると、最も上昇率が高かったのは住居(2.56%増)で、物価全体への増加寄与度も最も高かった(0.41ポイント、添付資料表参照)。押し上げ要因となったのは、前月に引き続き電気代金の上昇(6.47%増)だ。ブラジルでは現在、電気代の追加料金は水力発電所のダム貯水量や火力発電所の稼働率を基に算定している。追加料金は「緑」「黄」「赤1」「赤2」の4段階の色で示し、「緑」だと追加料金はないが、「黄」の時は100キロワット時(kWh)当たり1.34レアル(約28円、1レアル=約20.6円)、「赤1」は4.16レアルが追加徴収される。「赤2」は9月に追加料金が引き上げられ、14.20レアルとなった(8月31日付現地紙「アジェンシア・ブラジル」、注)。「赤2」については、ここ数カ月の干ばつの影響で国家電力庁(ANEEL)が6月に、7月から11月にかけて追加料金を6.24レアルから9.49レアルに値上げると発表していたが(2021年8月2日記事参照)、9月にさらに金額が改定された。IBGEの調査マネジャーのペドロ・キスラノブ氏は「干ばつの影響で水力発電所のダム貯水量が大幅に減少しているため、電力価格の高い火力発電の稼働率を増やさなければなくなっている」と述べている。

次に上昇率が高かったのは交通・運輸(1.82%増)だった。主な要因は燃料価格(2.43%増)の上昇でガソリン価格(2.32%増)、エタノール価格(3.79%増)、ディーゼル価格(0.67%増)の上昇などが影響した。また、航空券価格(28.19%増)の上昇なども押し上げの要因となった。

飲食料品(1.02%増)も、果物(5.39%増)や粉末コーヒー(5.50%増)、鶏肉(4.50%増)の増加などが影響し上昇した。飲食料品の増加要因の1つである鶏肉の価格上昇の理由として、ペドロ氏は「干ばつの影響で飼料の価格が上昇したことに加え、牛肉の代用品として鶏肉の需要が高まっていることなども影響した」と述べている。

(注)「赤2」の14.20レアルの追加料金は2022年4月まで適用される予定。

(高氏朋佳)

(ブラジル)

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