中国製の人用ワクチン輸出、1~9月累計で100億ドル突破

(中国)

中国北アジア課

2021年10月27日

中国製の人用ワクチンの2021年1~9月における輸出額(注1)は前年同期比146倍の116億7,189万ドルだった。9月単月でも、前月比13.3%増の22億1,565万ドルと、中国のワクチン輸出は増加基調が続いている(添付資料図参照)。

1~9月の輸出額を国・地域別にみると、アジアや中南米の国・地域が上位になっている(添付資料表1参照)。最も多いのはインドネシアで、13億9,769万ドル(構成比12.0%)だった。ブラジル(同8.0%)、パキスタン(同7.7%)が続いた。

外交部の汪文斌報道官は10月21日の記者会見で「中国は10月17日までに、100以上の国や国際組織に対し、15億回分を超える新型コロナウイルスワクチンを提供した」と紹介した。習近平国家主席も9月9日にオンライン方式で開催されたBRICS第13回首脳会議で「2021年通年では20億回分のワクチンの国外への提供に努める」と表明していた。

新興国に対する中国のワクチン支援に関し、習国家主席は同首脳会談で「『COVAXファシリティー』(注2)に1億ドルを寄付するとともに、年内に開発途上国に対しさらに1億回分のワクチンを無償で提供する」とも言及した。

「COVAXファシリティー」を通じた分配状況について、ブリッジコンサルティング(注3)が整理した情報を参照すると、中国のワクチン供給先はインドネシアが最も多く390万回分(到着分のうち10月18日時点までに公表されたもの、以下同)、バングラデシュ(350万回分)、ベネズエラ(330万回分)などが続く(添付資料表2参照)。アンゴラ(250万回分)やタンザニア(110万回分)などアフリカ諸国も供給先に名を連ねるが、上述の全体の供給量(15億回分)を踏まえると、同ファシリティーを通じた供給は依然として極めて少ない。

世界保健機関(WHO)は10月10日、アフリカ諸国で2回のワクチン接種を完了した人の割合は全人口の3%にとどまると指摘している。

中国国務院の共同予防抑制メカニズムによると、10月23日時点の中国でのワクチン累計接種回数は22億4,473万回。2回の接種が完了した人数は10億6,762万人に達した(10月23日時点)。こうした中、中国では9月から10月にかけて複数の地域で3回目の一般向け新型コロナワクチン接種がスタートしている(2021年10月12日記事参照)。WHOも10月10日、シノファームとシノバック・バイオテックのワクチンに関して、60歳以上の接種者に3回目の追加接種を勧めるとの見解を示した(注4)。COVAXファシリティーも含め、3回目接種向けを含めた国内外への積極的な供給が続くとみられる。

(注1)HSコード300220(人用のワクチン)に属するもの。この統計には、新型コロナワクチン以外の人用ワクチンも含まれるが、増加の推移をみる限り、多くが新型コロナワクチンと推測される。

(注2)「COVAXファシリティー」とは、新型コロナワクチンの公平な配分を目指す国際的な共同購入の枠組み。GAVIワクチンアライアンス(途上国のワクチン普及を支援する国際組織)、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、WHOの3者が主導して運営される。中国メーカーのワクチンのうち、シノファームとシノバック・バイオテックのワクチンがWHOの緊急使用リストに追加されている。

(注3)米国のコンサルディング企業Global Health Strategiesとの合弁により設立された中国のコンサルティング企業(本社:北京)。

(注4)WHOは10月10日、同月4~8日に開催された予防接種に関する戦略諮問委員会(SAGE)における見解を公表。新型コロナワクチンについて、まずは2回の接種完了を優先すべきとしながら、免疫不全者に限って追加接種を推奨するとした。また、シノファーム製とシノバック製のワクチンについては、免疫の有無にかかわらず、60歳以上への追加接種を勧めた。

(小林伶)

(中国)

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