加速する新型コロナウイルスワクチン普及

(インド)

ニューデリー発

2021年09月17日

インド国内における新型コロナウイルスのワクチン接種回数が9月14日、累計7億5,000万回を突破した。8月31日と9月6日は、1日当たりの接種回数が1,000万回を超え、9月前半の1日当たりの接種回数は平均700万回を上回る(添付資料図参照)。政府が積極的にワクチン接種の拡大を図る中、3カ月前と比べると2倍のペースで普及が進んでいる。

インドでは9月現在、1日当たりの新規感染者数が2万~4万人前後と横ばいで推移しており、その半数以上が南西部のケララ州に集中している。一方、首都ニューデリーがあるデリー準州においては、7月以降、新規感染者数が100人を超える日はみられず、州によって感染状況は大きく異なる。ただ、ヒンドゥー教の新年を祝うディワリがある11月上旬前後に全国的な感染再拡大を懸念する声もあり、ワクチン普及は政府の新型コロナウイルスへの対策における最優先事項だ。

インドでは、1月に医療従事者やフロントワーカー向けのワクチン接種が開始されて以降、対象者が段階的に広げられてきた。現在の対象は18歳以上の成人で、年齢要件を満たせば国籍を問わず接種可能だ。国内で最も流通しているワクチンは、地場セラム・インスティチュート・オブ・インディアが生産する英国アストラゼネカ製の「コビシールド」で、全体の9割近くを占める。また、地場バーラト・バイオテックが開発した「コバクシン」が1割程度あるほか、ロシア国立ガマレヤ研究所による「スプートニクV」も最近流通し始めた。

インド政府はワクチン普及を加速化すべく、あらゆる手立てを講じている。保健・家庭福祉省は5月27日、高齢者や障がい者を主な対象として、医療施設以外をワクチンの集団接種会場とする場合のガイドラインを発表。また同省は、新たなワクチンとして、6月29日にモデルナ製、8月7日にジョンソン・エンド・ジョンソン製、8月20日にザイダス・カディラ製をそれぞれ緊急承認した。

政府は、IT技術を積極的に活用している。ワクチン接種希望者は、政府が用意するデジタル・プラットフォーム「Co-Win」(2021年1月20日記事参照)やスマートフォン用アプリ「アローギャ・セツ」(2021年3月24日記事参照)を通じて、簡単に接種予約ができる。接種後にはすぐに同アプリ上で接種証明書が発行されるなど、全てがペーパレスで完結する仕組みが構築されている。

写真 ワクチン接種証明書提示客に無料特典を付ける飲食店も(ジェトロ撮影)

ワクチン接種証明書提示客に無料特典を付ける飲食店も(ジェトロ撮影)

(広木拓)

(インド)

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