シェル、2025年までに英国でEV充電設備を5万台設置へ

(英国)

ロンドン発

2021年09月03日

英国・オランダ石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルは9月1日、同社子会社で電気自動車(EV)用充電設備の開発・製造・運用を行う、ドイツのユビトリシティ(Ubitricity)を通じて、2025年末までに英国全体で5万台のEV用路上充電設備を設置すると発表した。シェルは2020年4月、2050年までに自社エネルギー事業による温室効果ガス(GHG)排出をネットゼロとする目標を発表。2021年2月には、同社の脱炭素戦略を発表し、その中で、同社が世界各地で設置するEV用充電設備を現在の6万台超から2025年までに50万台に拡大する目標を掲げている。

ユビトリシティは、既に英国で街灯の柱や、歩道と車道を分離するポールなど既存のインフラを使用し3,600台以上のEV用充電設備を設置しており、国内市場シェア14.4%で首位に立っている(添付資料図1参照)。

シェルは5万台の充電設備設置という目標実現に向けて、地方自治体が路上充電設備をゼロコストで設置できるように資金面での支援をする。英国政府は、地方自治体向けの路上住宅用EV充電インフラの調達と設置へ資金を提供する措置「居住者用路上充電設備スキーム(ORCS)」を通じ、設置費用の75%を負担している(2021年2月25日記事参照)。シェルは、地方自治体が負担する残りの25%を一定の条件で提供することで、路上充電設備の普及拡大を狙う。

政府諮問機関の気候変動委員会(CCC)は、2021年6月に発表した報告書「排出削減の進捗状況PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」で、政府は2025年までに英国全体で15万台、公共の充電設備の設置を目指す必要があるとしている。シェルの目標が達成されれば15万台の3分の1となり、市場シェアを大きく拡大することになる。また、シェルは、より多くの場所で充電できるようにするために、路上充電設備と並行して店頭、スーパーマーケット、企業、自宅にも充電設備を急ピッチで展開していくにしている。

シェルのデビッド・バンチ英国会長は「EV充電設備の設置を加速させることは非常に重要。自宅、職場、外出先で充電設備を普及させ、より多くの住民がEVに乗り換えられるようにしたい」と、国内のEV普及を後押ししたい考えを示した。

英国では、2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売が禁止される(2020年11月20日記事参照)。2021年7月1日時点で公共の充電設備は2万4,374台設置されているが、EV市場を拡大するために充電設備のさらなる普及が急務となっており、地域による設置数の偏りも課題となっている(添付資料図2、図3参照)。

(宮口祐貴)

(英国)

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