バイデン米大統領、初の国連総会演説で諸課題に対して結束した行動を呼び掛け

(米国、世界)

ニューヨーク発

2021年09月22日

ジョー・バイデン米国大統領は9月21日、大統領就任後初となる国連総会での演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、山積する国際的な課題に対して各国が一致団結して取り組む必要があると呼び掛けた。

新型コロナウイルスや気候変動問題、国際的な力関係の変化、通商やサイバー、新興技術に関するルールの策定、そしてテロリズムへの対応といった課題を挙げ、われわれは歴史的な転換点にあるとし、今それらにどう応えるかが来るべき未来を決定づけると強調した。米国としては、アフガニスタンでの戦争を終結させ、新たな外交の時代を開いたとし、インド太平洋地域など優先的な課題・地域に焦点を当て、国連のような多国間の枠組みを通じて同盟・友好国との協力を強化していくとした。そして、政権発足からの8カ月を振り返り、NATOやクアッド(注1)、ASEAN、アフリカ連合、米州機構などの地域枠組みや、世界保健機関(WHO)やパリ協定といった国際枠組みへの関与を深めてきたとし、「共有する諸課題に焦点を当て、地球規模での行動を促進するために、国連をはじめとする国際的な場に戻ってきた」と、米国が国際協調路線に復帰したことを印象付けた。

個別の課題について、新型コロナウイルスでは、既に米国が国際的な取り組みに150億ドル以上の資金と1億6,000万回分のワクチンを供給したと強調した。翌22日には、バイデン大統領の主催で世界新型コロナウイルスサミットを開き、新たな取り組みを発表するとした。気候変動問題では、4月に主催した気候サミット(2021年4月23日記事参照)で、米国がオバマ政権時にパリ協定で約束した温室効果ガスの排出量削減目標を大幅に引き上げた点に言及し、11月のCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)では各国が可能な限り野心的な目標を持ち寄るよう呼び掛けた。新興技術の管理やサイバー問題、通商などについては、民主主義国家を中心とした国際的なルール策定を進めていくとの意気込みを示した。

安全保障面では、中国との競争を念頭に「新たな冷戦または世界が分断されることは求めていない」とし、意見の相違を抱えていても、いかなる国とも平和的な問題解決を志向するとした。核拡散問題では、イランが「包括的共同行動計画(JCPOA)」の約束を再び順守するのであれば、米国も枠組みに戻る用意があるとした。朝鮮半島の非核化でも外交努力を継続するとした。

演説の終盤では、開発途上国でのインフラ投資支援の重要性、各国内での紛争問題およびそれに伴う人権問題に言及した。その上で、民主主義が人類の潜在性を解放する最良の手段だと強調した(注2)。最後に、「われわれはこれ以上時間を無駄にはできない。ともに取り組もう。今こそ、ともにより良い未来を創ろう」と各国に呼び掛けた。

(注1)日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国がインド太平洋におけるルールに基づく秩序を維持・強化するという共通のコミットメントの下、安全保障や経済を協議する枠組み。

(注2)バイデン大統領は12月9~10日に、バーチャル形式で「民主主義のための首脳会議」を開催し、その1年後には対面形式での開催を予定している。

(磯部真一)

(米国、世界)

ビジネス短信 c0ced1cdf4e02bb6