最低賃金再引き上げや課税最低限引き上げなど弱者対策を相次ぎ発表

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年09月28日

アルゼンチン政府は9月22日、政府、労働組合、経営者団体により構成される国家雇用・生産性・最低賃金評議会で最低賃金の引き上げについて協議し、2022年2月までに2021年3月比で52.8%引き上げることで合意した。4月27日には同35%の引き上げで合意していたが、現下の経済状況を受けてさらなる引き上げを図った格好。

前回4月27日の合意では、2021年3月に月額2万1,600ペソ(約2万3,760円、1ペソ=約1.1円)だった最低賃金を2022年2月までに段階的に35%引き上げる予定だったが(2021年5月7日記事参照)、2021年7月7日にはその段階的な引き上げを前倒しするとも発表していた(2021年7月20記事参照)。今回の決定により、2022年2月までに最低賃金の月額を段階的に3万3,000ペソまで引き上げる。

9月27日に公布した国家雇用・生産性・最低賃金協議会決議第11/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、今回の最低賃金の段階的な引き上げ額は次のとおり。

  • 2021年9月1日からは月額3万1,104ペソ、時給の場合は155.52ペソ
  • 2021年10月1日からは月額3万2,000ペソ、時給の場合は160.00ペソ
  • 2022年2月1日からは月額3万3,000ペソ、時給の場合は165.00ペソ

労働省は今回の引き上げについて、「約110万人の労働者の収入を増加させるだけでなく、(最低賃金が算定のベースとなっている)補助金や手当の受給者にも裨益(ひえき)する」「今後数カ月の(経済状況)の進展を評価し、最低賃金を再度見直す必要が生じれば再び評議会を開催する」として、今後さらに最低賃金を見直す可能性を示唆した。

また、政府は9月23日に政令620/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、個人所得税の課税最低限(課税所得額の下限)を月額15万ペソから17万5,000ペソに引き上げた。2021年4月21日に引き上げた(2021年4月26日記事参照)ばかりだが、所得税の課税対象から外れる労働者がさらに増えることになる。

これら政府の発表は、9月12日に実施された国会議員予備選挙(PASO)での与党連合の大敗(2021年9月17日記事参照)を受けてのもので、11月14日の本選挙に向けた支持率の回復を図るためとされる。9月20日付の現地紙「インフォバエ」によると、最低賃金や個人所得税のほかに、個人事業主やインフォーマルセクターの労働者に対する特別給付金「緊急家庭収入(IFE)」の給付も再開する考えだとしている。IFEは、最も厳格な外出禁止措置が実施されていた2020年中に3度にわたって1世帯につき1万ペソが給付された。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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