欧州自動車工業会、EV充電ステーション設置数目標の引き上げを提言

(EU)

ブリュッセル発

2021年09月13日

欧州委員会が7月に発表した環境対策政策パッケージ「Fit for 55」(2021年7月15日記事参照)では、「乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則」と「代替燃料インフラ指令」について、それぞれ改正案が発表された(2021年7月16日記事参照)。

ゼロエミッション車の普及を加速させたい欧州委の提案に対して、欧州自動車工業会(ACEA)は9月9日、2020年のEU加盟27カ国の主要道路100キロごとの電気自動車(EV)の充電ステーション数のデータ(添付資料表参照)を基に、パッケージ発表直後の声明と同様に、EU域内の充電ステーション不足を訴え、欧州委の提案への懸念をあらためて示した。データによると、100キロごとの充電ステーション数が1を下回る加盟国は10カ国(リトアニア、ギリシャ、ポーランド、ラトビア、ルーマニア、キプロス、ハンガリー、エストニア、ブルガリア、チェコ)に上る。うち、ハンガリー(4.7%)を除き、いずれの国でもEVの市場占有率は3.0%を下回っている。EVの市場占有率が27カ国中で最も高いスウェーデン(32.2%)や、比較的高いフィンランド(18.1%)、デンマーク(16.4%)、フランス(11.2%)でも、100キロごとの充電ステーション数は5以下だった。100キロごとの充電ステーション数が2桁台(10以上)の加盟国は4カ国(オランダ、ルクセンブルク、ドイツ、ポルトガル)だけだった。ACEAのエリック・マーク・フイテマ事務局長は、少数の西欧諸国で整備が進められているものの、それ以外の国では「悲惨な状況」で、EVの普及を推進するには、EU全域において、短期間で充電ステーションの大幅な整備を進める必要がある、と指摘した。

充電ステーションの設置目標数の大幅な引き上げが必要と指摘

欧州委の「代替燃料インフラ指令」改正案では、同指令を加盟国に直接適用できる「規則」とし、充電ステーションについても拘束力のある設置数目標を各加盟国に課すとしている。フイテマ事務局長は、充電ステーションについて目標を設定することは必要で歓迎するが、「CO2排出基準に関する規則」改正案などで提示された、欧州委が掲げるCO2排出削減目標と連動していないと主張。充電ステーションの設置数目標を大幅に増やす必要があるとした。そして、欧州議会、EU理事会(閣僚理事会)に対して、これから行われる欧州委の提案に関する審議について、EVの普及のための適切な条件を整える機会として捉えるよう求めた。

(滝澤祥子)

(EU)

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