米USTR、太陽光発電製品のセーフガード措置めぐるWTOパネル報告歓迎

(米国、中国)

ニューヨーク発

2021年09月06日

米国通商代表部(USTR)は9月2日、米国による太陽光発電製品の輸入に関わるセーフガード措置について、WTOの紛争解決小委員会(パネル)が中国の主張を却下する報告を行ったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国のセーフガード措置は、2018年1月にトランプ大統領(当時)が発動し、同年2月7日以降、太陽光発電セルの一部やセルのモジュール、パネルなどの輸入に対して、セーフガード関税を適用している(注)。中国は同年8月に米国との協議をWTO規定に基づき要請したが、協議では解決に至らず、2019年8月にパネルが設置され、当事国による主張が展開されていた。

パネル報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、中国の主張が全て却下された。例えば、米国は、中国の産業政策による再生可能エネルギー分野の製造支援がセーフガード発動要件である「事情の予見されなかった発展」(GATT19条)に当たると主張したのに対し、中国は「国家が経済発展やエネルギー安全保障を追求することは、ほとんどの場合、予見不可能ではない」と反論した。これに関して、パネルは中国の立証を不十分として、米国の「(開かれた市場志向の政策に基づく国際貿易体制において)中国による生産拡大の規模・速度は予見不可能」との見解を支持している。

USTRのキャサリン・タイ代表は今回のWTO報告を歓迎しつつ、バイデン政権の経済対策として「太陽光発電の潜在力を最大限発揮するための歴史的なインフラ投資を行い、気候危機への対応に寄与する先端分野で高賃金の雇用を創出する必要がある」と述べた。米エネルギー省は2035年までに太陽光発電が総発電量の40%に達する可能性を指摘している(2021年8月23日記事参照)。

米国の太陽光発電製品へのセーフガード措置は2022年2月6日で失効予定だが、国内企業の申請に基づき、米国際貿易委員会(ITC)が8月に延長検討のための調査を開始している。調査結果は12月8日までに大統領に報告される見通しだ。中国は今回のパネル報告に対して上訴することが可能だが、WTO紛争処理制度の最終審に当たる上級委員会は、2019年12月から欠員による機能停止に陥っている(2020年12月1日記事参照)。

(注)具体的な対象製品や適用税率については2018年1月30日記事参照。なお、2020年10月の大統領布告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、セーフガード税率は18%に変更され、また、セーフガード関税の適用除外となっていた両面受光型の太陽光発電パネルが適用対象に加わっている。

(藪恭兵)

(米国、中国)

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