バイデン米大統領、リコール選挙のカリフォルニア州ニューサム知事続投を訴え

(米国)

米州課

2021年09月14日

米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)解職の是非を問う住民投票(リコール選挙、2021年7月5日記事参照)が9月14日に実施されるのを前に、ジョー・バイデン大統領は13日、同州ロングビーチ市を訪れ、知事の選挙集会で応援演説を行った。大統領は、ニューサム知事のこれまでの新型コロナウイルス対策を称賛し、感染収束には知事の続投が必要と訴えた。また、同知事が中絶などの女性の権利や気候変動対策、労働者の保護を重視していることを挙げ、「あなた方が下す決断は、カリフォルニア州だけでなく、国全体に影響を及ぼす」と強調した。バイデン大統領の訪問に先立ち、8日にはカマラ・ハリス副大統領も同州で知事の選挙集会に参加し、解職反対に投票するよう呼び掛けた。

バイデン政権が今回のリコール選挙を重視するのは、カリフォルニア州が民主党の地盤であるということだけでなく、選挙結果が今後の政権運営に多大な影響を与える可能性があるためだ。同州選出のダイアン・ファインスタイン上院議員の健康が不安視されており、仮に同氏が任期中に辞職した場合、後任議員は知事が指名することになる。今回のリコール選挙で共和党知事が誕生すれば、後任議員に共和党員を指名することは確実で、その場合に民主党は上院で多数派(注1)の地位を失うことになる。

選挙分析サイト、ファイブサーティーエイトによると、直近の各種世論調査の平均値(9月13日時点)では、解職反対(57.4%)が賛成(41.5%)を15.9ポイント上回り、ニューサム知事が優勢だ(注2)。ただ、実際の結果は、共和党支持層に比べ投票予定者が少ない傾向にある民主党支持層の投票率に左右されるとの見方もある(CBSニュース9月8日)。

後任知事立候補者の中では、保守系トークラジオ番組ホストのラリー・エルダー氏(共和党)が29.7%の支持を集め、トップとなっている(ファイブサーティーエイト、9月13日時点)。同氏は、州最低賃金の廃止などを訴えるほか、カリフォルニア州で発令されているマスク着用令や医療従事者らへの新型コロナウイルスのワクチン接種の義務付け(2021年8月12日記事参照)に反対し、自身が後任知事に就任した場合には、即座にそれらを撤廃すると主張。これに対し、ニューサム知事はこれまでの感染拡大抑止の取り組みを台なしにすると批判している。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、同州では9月13日時点で、12歳以上の人口の67.1%が接種を完了しており、州北部では同割合が8割を超える都市もある(2021年9月3日記事参照)。

(注1)上院(定員100議席)は、民主、共和各党が50議席ずつ占め、民主党はハリス副大統領の決裁票でかろうじて多数派を維持している。

(注2)リコール選挙では、投票者に(1)現知事解職の是非、(2)解職する場合、どの候補者を後任に選ぶか、を聞く。(1)で解職が過半数となった場合、(2)の最多得票者が新知事に選出される。

(甲斐野裕之)

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