「反外国制裁法とデータセキュリティー法」ウェビナーを開催

(中国)

中国北アジア課

2021年09月13日

ジェトロは9月9日、中国の反外国制裁法とデータセキュリティー法の概要と対応ポイントに関するウェビナーを開催した(注1)。前半では、森・濱田松本法律事務所上海オフィス首席代表・弁護士の石本茂彦氏が反外国制裁法について、後半では、北京オフィス首席代表・弁護士の森規光氏がデータセキュリティー法および個人情報保護法について解説した。

反外国制裁法、損害賠償・差止訴訟に関する条項に留意

反外国制裁法(2021年6月14日記事参照)は、米国をはじめとした諸外国の対中制裁強化への対抗措置として2021年6月に施行された。基本的な枠組みは、外国の不当な措置の実施に関与した個人・組織をリストに掲載し制裁を行うもの。石本氏は「現時点で日系企業がリストに掲載される可能性は低いといえる。ただし、損害賠償・差止訴訟に関する条項(第12条)(注2)による訴訟リスクには、留意が必要」と指摘。特に、日本企業の中国販売会社と中国企業の直接取引でリスクが顕在化する可能性があるとした。また、「欧米諸国の法令順守により、中国法令との板挟みが起こり得る」と話した。

写真 森・濱田松本法律事務所の石本弁護士による講演の様子(ジェトロ撮影)

森・濱田松本法律事務所の石本弁護士による講演の様子(ジェトロ撮影)

データ・個人情報規制の統制3法を制定、関連法制の動向に注視が必要

中国のデータ・個人情報規制の基本法は、サイバーセキュリティー法(2017年6月施行)に加え、データセキュリティー法(2021年9月1日施行、2021年6月18日記事参照)と個人情報保護法(2021年11月1日施行予定、2021年8月26日記事参照)の制定により、基本法整備が完了としたといえる。

データセキュリティー法は、適用主体を限定しておらず、適用対象となるデータおよび取扱行為が広範であるのが特徴の1つ。一般的な「データ取扱者」には、全課程のデータ安全管理制度の構築・整備が求められ、例えば、技術研修の実施やデータ漏えい防止措置などを講じる必要がある。また、重要データの国内保存や域外移転規制については、現時点では重要情報インフラの運営者のみが適用対象だが、森氏は「その他データ取扱者に対する規則も制定される見通し。重要データの定義も含め、関連法制の動向に注視が必要」とした。

個人情報保護法では、個人情報の域外移転(2021年8月27日記事参照)などに関する相談が多い。域外移転には、個別同意の取得に加え、ネットワーク情報部門の安全評価の合格、専門機関の認証取得、標準契約に従い国外の受託者との契約締結のいずれかの条件を満たす必要があるが、これらの詳細は明らかになっていない。森氏は「法制の動向を注視しつつ、迅速に対応できるよう今から準備しておくことが重要」と述べ、具体例として、自社における個人情報の棚卸し、管理体制と法令要求とのギャップ確認などを挙げた。

写真 森・濱田松本法律事務所の森弁護士による講演の様子(ジェトロ撮影)

森・濱田松本法律事務所の森弁護士による講演の様子(ジェトロ撮影)

写真 講演の様子(ジェトロ撮影)

講演の様子(ジェトロ撮影)

(注1)本ウェビナーの様子は、9月16日~11月16日にオンデマンド配信(有料)で視聴可(申め込み締め切り11月16日)。

(注2)第12法条では、外国の組織や個人が、外国が出した差別的な措置を実行した場合、中国個人・組織は、中国の裁判所に「合法的権益」の侵害停止、損害賠償を求めることが可能とされている。

(亀山達也)

(中国)

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