個人情報の越境に関する規則制定

(中国)

北京発

2021年08月27日

中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は8月20日、個人情報保護法を可決した。11月1日から施行される(2021年8月26日記事参照)。同法では個人情報の越境提供に関する規定が設けられた(注1)。

個人情報取扱者が中国国外に個人情報を提供する必要がある場合、次の要件のうち1つを満たさなければならないとした(注2)。要件は、(1)国家インターネット情報機関による安全評価に合格する、(2)専門の機構による個人情報保護の認定を受ける、(3)国家インターネット情報機関が制定する標準契約に従い、国外の移転先と契約を締結し両当事者の権利と義務を取り決める、(4)法律、行政法規または国家インターネット情報機関の定めるその他の要件を満たすとしている。このほか、中国が締結、または参加する国際条約や協定に中国国外に個人情報を提供する条件等などついて規定がある場合には、その規定に従い執行することができるとした。

個人情報取扱者が中国国外へ個人情報を提供する場合には、国外の移転先の名称または氏名、連絡先、取り扱い目的、取り扱い方法、個人情報の種類、個人が国外移転先に対し同法の定める権利を行使する方法や手続きなどの事項を個人に告知し、かつ、個人の個別の同意を取得する必要がある。

また、データの国内保存に関しては、重要情報インフラ運営者と取り扱う個人情報が国家インターネット情報機関の定める数量に達した個人情報取扱者は、收集および発生した個人情報を中国国内に保管しなければならないとした。さらに、それらの個人情報を国外に提供する必要がある場合には、国家インターネット情報機関による安全評価に合格しなければならない。

個人情報の越境提供に関連した国際訴訟(仲裁)に影響与える可能性も

個人情報の越境提供に関する要件について、環球法律事務所は「重要情報インフラ運営者および取り扱う個人情報が国家インターネット情報機関の定める数量に達した個人情報取扱者以外の企業によるデータ国外移転については、安全評価は不可欠の要件とはならない」とし、「これらの企業は、専門の機構による個人情報保護の認定を受けるか、もしくは国外の移転先と国家インターネット情報機関が制定する標準契約を締結するかを選択できる」と解説している。

同事務所は想定される影響として、「個人情報取扱者は中国の主管機関の認可を経ずに外国の司法または法執行機関に中国国内に保管する個人情報を提供してはならないことから、個人情報の越境提供に関連した国際訴訟(仲裁)に影響を与える可能性がある」と指摘した。

(注1)「個人情報」とは、電子的またはその他の方法で記録され、識別された、または識別可能な自然人に関する各種の情報で、匿名化処理後の情報を除くと規定された。「個人情報の取り扱い」には、個人情報の収集、保管、使用、加工、伝達、提供、公開、削除などが含まれるとした。

(注2)個人情報取扱者とは、個人情報取り扱い活動で、その目的や方法を自ら決定する組織または個人を指す。

(藤原智生)

(中国)

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