最低賃金、2022年1月から20万フォリントに大幅引き上げか

(ハンガリー)

ブダペスト発

2021年09月28日

ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相は9月20日から始まった秋の通常国会の冒頭における施策方針演説で、「雇用主、労働組合、政府の間で行われている交渉により、来年、最低賃金が月額20万フォリント(約7万2,000円、1フォリント=約0.36円)に引き上げられる可能性が高い」と発言した。

最低賃金の20万フォリントへの引き上げについては、政府が2021年7月から8月にかけて実施した国民向け全国調査の質問事項にも含まれており、その結果によると、回答者の94%が最低賃金をできるだけ早く引き上げることを支持している。このような状況を受けてオルバーン首相は同日、自身のSNSを通じて、最低賃金の引き上げを「既に確定した事実」と発信した。

政労使間で2016年末に合意した6年間の協定では、最低賃金を11%引き上げるが、企業の負担を軽減させるために、社会貢献税の雇用主負担率(当時27%)を22%に引き下げるととともに、その後毎年2%幅ずつ下げていくことが決定された(2016年12月28日記事参照)。この協定は2022年に期限が切れるが、政府は再び労使の代表者と複数年(少なくとも2024年まで)にわたる賃金協定を締結したいと考えている。

「最低賃金を、現在の月額16万4,000フォリントから20万フォリントに引き上げることを受け入れるには、賃金に対する企業の社会貢献税負担率の、最低でも5%(ポイント)という大幅な削減が条件だ」と、雇用者代表組織MGYOSZの副会長であるロレック・フェレンツ氏は語っている(ビジネスニュースサイトのポートフォリオ9月6日)。また、このような削減が行われなければ、企業の財務状況は非常に厳しいものとなり、解雇や倒産につながるだろうと主張した。

一方、ハンガリー商工会議所のパラグ・ラースロー会長は、最低賃金が総額20万フォリントになっても、ハンガリー経済は耐えられるとの見解を示している。同会長は「安い労働力が競争力のカギという過去30年間の考え方と決別し、効率性、生産性、幸福度などの多面的な視点から賃金を検討する、欧州的なアプローチに移行する必要がある」と述べ、最低賃金の上昇はコストとしてではなく、経済発展のためのツールとして捉えるべきと唱えた。これに対して、バルガ・ミハーイ財務相はパラグ会長との会談後、最も影響を受けるだろう中小企業が最低賃金の引き上げに対応できるよう、政府が支援することを約束した。

今回の動向に対して、ハンガリー自動車工業会のキリアン氏は「自動車業界という、高付加価値型の業界においては最低賃金が大幅増となることは直接的には問題にはならないだろう。しかし、長期的にみれば20%上がるという動きがわれわれの業界にも波及してくるだろう」と懸念を語った。

産業界と政府の間の最低賃金をめぐる常設協議会が9月14日から行われ、その第1回交渉で、2022年から最低賃金を20万フォリントに1段階引き上げることで合意したが、現在、21万9,000フォリントである熟練労働者(高校卒業以上の資格者)の最低賃金についての合意はまだされていない。全国労働者評議会連盟(MOSZ)のパルコビッチ・イムレ議長は、最低賃金を20万フォリントに引き上げることになれば、熟練労働者の最低賃金も25万フォリント程度に上昇する可能性がある、との見方を示している。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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