法人税率を1月から9%に引き下げ-企業負担の軽減と投資の活性化が狙い-

(ハンガリー)

ブダペスト発

2016年12月28日

 1月から法人税率がEU加盟国で最低の9%となる。政府は、企業負担を軽減し投資の活性化を狙う。最低賃金は11%の引き上げとなったが、企業への過度な負担を軽減するため、雇用者が負担する社会貢献税を22%に引き下げる。法人税の減収分は賃金上昇による消費拡大を見込み、付加価値税の税収増で補填(ほてん)する計画だ。

<法人税率9%はEU加盟国の中で最低>

 12月12日、2017年税制改正法案が国会で可決された。これにより2017年1月から法人税率が一律9%に引き下げられる〔2016年は課税所得5億フォリント(約2億円、1フォリント=約0.4円)まで10%、超過分に19%〕。9%はEU加盟国の中で最低の法人税率だ。

 

 政府は法人税率を引き下げて企業活動を活発にし、国際競争力を高めることを狙う。法人税の減収分を埋め合わせるため他の税が増税となることが心配されるが、減税は2017年予算に影響しないと、バルガ国家経済相が11月18日のテレビインタビューで答えている。国家経済省は法人税減税による税収減を1,450億フォリントと試算するが、減税効果で企業活動が活発になり、新規投資が促進され、経済が成長するとして、付加価値税などは増収となることを見込み、2017年予算の税収額は当初の予定額を維持している。しかし、中小企業の多くが既に10%の法人税しか払っていないことから、減税による恩恵が大企業に偏ることや、多くの大企業は投資優遇措置によって法人税減税を受けていることなどから、政府が考えるような今回の減税による経済成長は期待できない、と一部メディアは指摘する。

 

<法定最低賃金を引き上げ、社会貢献税は減税>

 税制改正については、2016年11月に政労使間で合意していた法定最低賃金の引き上げも含まれている。改正により、2017年の法定最低賃金は15%増の12万7,000フォリント、高校卒業以上の資格者に対する保証最低賃金は25%増の13万8,000フォリントとなる。政府はハンガリーの賃金水準がEU加盟国の中で低いことが労働力の国外流出の一因だとして、政労使間で6年間にわたり最低賃金を引き上げていく方針に合意しており、2018年に法定最低賃金はさらに8%増、保証最低賃金は12%増となる予定だ。民間調査会社GKIは、最低賃金の引き上げによる2017年の平均賃金上昇率は、従業員250人を超える大企業で11%、中小企業で7~8%と予測している。

 

 賃金引き上げを急ぐ一方で政府は、企業への過度の負担を軽減するため雇用者負担が義務付けられている社会貢献税を、2017年1月に27%から22%へ5ポイント引き下げる。社会貢献税の引き下げも最低賃金同様に政労使間で合意されており、2018年は2017年からさらに2ポイント引き下げ20%とする。それに加え、2017年の平均賃金上昇率が11%を超えた場合、2018年の社会貢献税を追加で0.5ポイント引き下げ19.5%にすることを計画している。政府は労働から消費に課税を移すことを政策目標として掲げており、賃金上昇による消費拡大でもたらされる税収増で、労働にかけられる直接税を減税していく方針だ。一方、消費にかけられる付加価値税率は27%とEUで最も高い。新築住宅や豚肉にかかる付加価値税に軽減税率を適用し、成長のインセンティブにしようとしているが(2016年1月25日記事参照)、付加価値税率全体の引き下げはないようだ。

 

(バラジ・ラウラ、三代憲)

(ハンガリー)

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