イセ・フーズ、シンガポール最大の鶏卵場を開発、AI技術導入へ

(シンガポール)

シンガポール発

2021年09月29日

イセ・フーズ・ホールディングス(IFH)がこのほど発表した、シンガポールで設置する鶏卵農場の生産能力は完全稼働時に年間3億6,000万個と、国内最大の養鶏場となる見通しだ。同施設は鶏の育成から卵生産までを一貫生産する最新鋭施設となり、2022年から2024年まで順次、稼働を予定している。投資額は1億シンガポール・ドル(約82億円、Sドル、1Sドル=約82円)。

IFHはシンガポールを本社とし、日本最大の鶏卵生産事業者であるイセ食品の名誉顧問、伊勢信彦氏(92歳)が過半数の株式を保有する。シンガポール食品庁(SFA)とIFHは9月10日、IFHが同国で養鶏場を開発する覚書(MOU)を締結した。IFHは同覚書に基づき、養鶏場を設置する約13ヘクタールの農地をリースする。

施設内には、(1)孵化(ふか)場、(2)雛(ひな)鳥から若雌となるまで飼育する種鶏若雌農場、(3)若雌を成鶏まで飼育する種鶏成鶏農場、(4)成鶏から産卵する採卵農場、の4施設が設置される。同施設には、イセ食品が持つ種鶏の育成から採卵までの一貫生産システムを導入するとともに、鳥インフルエンザなどの防疫体制のノウハウも取り入れる。また、鶏の健康状態を確認するのに人工知能(AI)を導入するなど最新技術を導入する方針だ。IFHの施設は研究開発(R&D)の人材を含め、当初70~80人の雇用を予定している。

IFHの同施設の完全稼働時には、地元の卵生産能力が1日当たり約100万個増加して、国内需要の約半分を満たす見通しだ。シンガポール政府は2019年3月に、2030年までに栄養ベースでの食料自給率を30%へと引き上げる目標「30×30」を発表しており(注)、IFHの施設が食料自給率引き上げに貢献すると期待している。同国の既存の3つの養鶏場は現在、国内需要の約3割を生産しており、残りはマレーシアなどを中心に海外からの輸入に依存している。政府は2020年3月に、新型コロナウイルス流行に伴うサプライチェーンの遮断で、卵を各国から約30万個緊急輸入した。イセ食品はその際の緊急調達先の1社だった。

(注)政府が2019年3月に発表した食料自給率目標については、2020年9月17日付地域・分析レポート参照

(本田智津絵)

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