7月の中国の工業生産、前年同月比6.4%増、多数の品目で伸び鈍化

(中国)

中国北アジア課

2021年08月20日

中国国家統計局の8月16日の発表によると、7月の工業生産増加額(付加価値ベース、注1)は前年同月比(実質ベース)6.4%増となった(添付資料図参照)。2020年11月に同7.0%へ上昇して以降、7%超を維持してきたが、7月は6月の8.3%から1.9ポイント低下した。

主な工業製品の7月の生産量をみると、多くの品目で前年同月比減少、あるいは増加しても前年同月と比較したプラス幅が6月よりも縮小した(添付資料表参照)。とりわけ自動車が15.8%減と落ち込みが大きく、3カ月連続で減少した。車載半導体の不足や原材料価格の上昇、洪水の発生や新型コロナウイルス感染再拡大などが響いたとされる(2021年8月13日記事参照)。ただし、新エネルギー車の生産は引き続き旺盛で、7月の生産台数は前年同月の2.7倍の28万9,000台の大幅増となり、自動車全体(185万3,000台)の15.6%を占めた。

このほか、銑鉄(8.9%減)とセメント(6.5%減)も3カ月連続で前年同月比マイナスとなった。スマートフォンは6月の0.6%減から6.9%減へとマイナス幅が拡大した。6月までは増加していた粗鋼や鋼材の生産も、7月は8.4%減、6.6%%減と、ともにマイナスに転じた。

化学品では、エチレン(23.5%増)が2桁増、カセイソーダ(0.6%減)が微減だが、6月の伸び率からはいずれも7.6ポイント、6.6ポイント低下している。増加が著しい工業用ロボット(42.3%増)、集積回路(41.3%増)、金属切削加工機械(27.5%)をみても、6月の伸び率と比較すると、それぞれ18.4ポイント、2.6ポイント、2.0ポイント落ち込んだ。

その他の主要経済指標をみると、7月の消費(社会消費品小売総額)は8.5%増で、6月から3.6ポイント低下したほか、1~7月の投資(全国固定資産投資、農業を含まず)は前年同期比10.3%増で1~6月から2.3ポイント低下となるなど、いずれも伸び率は6月までと比べてやや減速傾向がみられる。

国家統計局は7月の中国経済について、「総じて安定した回復を続けている」と説明したが、「世界の新型コロナの感染状況は絶えず変化し、外部環境はより複雑化・緊迫化しており、国内各地の新型コロナウイルス感染と自然災害の発生が地域経済へも一部影響を及ぼした」と国内外の要因を挙げ、「経済回復は依然として強固ではなく、一様でもない」との認識を示した。

国家統計局の寧吉喆局長(国家発展改革委員会副主任を兼任)は「人民日報」への寄稿文で、2021年の経済回復の成果を評価し、主要なマクロ経済指標については「合理的な範囲内」と強調した一方、「内需の成長力は弱含み、一部の産業では企業の生産・経営状況に格差が生じ、雇用の構造的問題(注2)が依然として顕著だ。経済回復の中で幾つかの新たな問題が生じている」として警鐘を鳴らした(「人民日報」8月6日)。

(注1)年間売上高2,000万元(約3億4,000万円、1元=約17円)以上の企業が対象。

(注2)大卒人材などが就職難に直面する一方、工場ではワーカーや技術系人材が不足しているとする雇用の需給ギャップのこと。

(森詩織)

(中国)

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