米USTR、労働問題の改善策で在メキシコ企業と合意、USMCAを活用

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2021年08月12日

米国通商代表部(USTR)は8月10日、メキシコの自動車部品メーカーのトリドネックス(Tridonex)との間で、同国北東部タマウリパス州マタモロス市にある同社工場における労働権侵害の改善策で合意したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。本件は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRLM)」を活用したもの。米国・メキシコ間では、7月初めにメキシコのゼネラルモーターズ(GM)の工場での問題解決で合意(2021年7月12日記事参照)して以来、RRLMに基づく2件目の成果となる。

本件は元々、メキシコの新興独立系労働組合の全国工業サービス労働者独立組合20/32運動(SNITIS)を含む北米3カ国の労組が5月に、RRLMに基づき提訴を行ったもの。その後、米国政府がメキシコ政府に対して正式に事実確認要請を行い、メキシコ政府は6月にその要請を受諾していた(2021年6月21日記事参照)。SNITISなどは、トリドネックスが、同社の労働者がSNITISに加入し、雇用主との間で新たな労働協約を締結するための代表権を取得するプロセスを阻害し、SNITISを支持する600人の従業員を不当に解雇したことを提訴理由としていた。

USTRがトリドネックスおよびメキシコ政府と合意した改善策をまとめたファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、トリドネックスが解雇した従業員の一部に合計で60万ドルを超える賃金を支払うことや、組合が雇用者と労働協約を締結するための代表権を取得するために行う投票に際して、メキシコ労働社会保障省(STPS)と独立した監視人の施設立ち入りを認めるといった事項が含まれている(添付資料参照)。

キャサリン・タイUSTR代表は今回の成果について、「今回の結果は、USTRの労働者中心の通商政策が実践された重要な実例で、当該企業(トリドネックス)とメキシコ政府が重要な成果を達成するために建設的に取り組んだことを称賛する」としている。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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