日系製造業、従業員の感染拡大などで生産体制維持が課題に

(インドネシア)

ジャカルタ発

2021年07月09日

新型コロナウイルスの感染が急激に拡大するインドネシアについて、ジェトロが在インドネシア日系製造業を対象に行ったヒアリングから、従業員間での感染が拡大し、製造ラインの維持が困難になるなど、多くの課題に直面する製造業の現状が明らかになった。同国では7月8日に1日当たりの感染者数としては過去最多の3万8,391人を記録。政府は感染封じ込めのため、ジャワ島およびバリ島において緊急活動制限を実施している(2021年7月2日記事参照)。ジェトロの進出日系企業リスト(2020年1月)によると、インドネシアに進出する日系企業数は約1,500社、その半数以上を占めるのが製造業だ。

生産体制維持が困難に

直面する最も大きな課題として、「従業員の18%が感染し、操業に影響が出ている」(輸送用機器関連A社)や「日本人駐在員複数人を含む従業員の感染拡大が直近数週間で激増し、生産維持のための要員アレンジが困難になっている」(輸送用機器関連B社)など、従業員間で感染が拡大し、生産体制の維持に支障を来していると回答した企業が複数存在した。

各社の対応として「ライン従事者の人数を減らして生産」(輸送用機器関連C社)や「部門間での人員調整や日雇い労働者で対応」(輸送用機器関連D社)などがみられたが、「顧客からの納期に対応できない」(繊維業E社)や「感染者増加による生産性低下」(輸送用機器関連C社)など、対応に苦慮する実態が明らかになった。緊急活動制限により業種によっては出勤率を制限される中、「地元警察からの出社率の削減要請を受け、メンバー表を作成中」(電気機器部品F社)という企業もあった。

退避帰国実現には高いハードルあり

感染拡大に伴う退避帰国の検討状況については、「本音は若手駐在員を中心に帰国を進めたいが、大手企業ほどの余裕がないのが現状」(輸送用機器関連G社)という声や「できる限り帰国しない方針だが、日本人2人体制のため、(帰国せざるを得ない場合は)業務に支障がでることが最大の懸念事項」(繊維業E社)と、人員体制維持のため会社によっては退避が難しい現実が浮き彫りとなった。また、「顧客対応や社内生産準備のため駐在員が日本へ退避できる状況にない」(輸送用機器関連H社)と、自社だけで判断できない難しい現状も明らかになった。一方、「少数の駐在員を順番に成田・羽田空港における海外在留邦人向けのワクチン接種事業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに参加させるべく、一時帰国を計画中」(繊維業I社)と、日本政府の支援策に期待する声も複数聞かれた。

ワクチン接種加速を求める

インドネシア政府への希望として、多くの企業が「ワクチン接種の加速」を挙げたほか、「病床の確保」(輸送用機器関連D社)という意見がみられた。また、ジャカルタから離れた場所で操業する企業からは、工場設備修理などを目的とした技術者の工場訪問が可能となるよう、「(インドネシア)国内移動の際のワクチン証明の免除」(医薬品製造業J社)との意見が出された。

(上野渉)

(インドネシア)

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