6月のインフレ率は若干の低下も、上半期累計では25.3%に

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年07月21日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は7月15日、6月のインフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕は、全国平均で前月比3.2%上昇したと発表した(添付資料図参照)。前年同月比では50.2%上昇し、2021年上半期の累計インフレ率(前年12月比)は25.3%となった。季節により価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスは前月比0.5%上昇し、エネルギーや公共サービスなど価格統制された財・サービスは3.2%上昇、季節要因と価格統制要因を除いたコアインフレ率は3.6%と最も上昇した。

費目別にインフレ率をみると、前月比での伸び率が大きかったのは、通信(7.0%)と酒類・たばこ(5.5%)(添付資料表参照)。通信部門では、携帯電話とインターネットへの接続サービス料金値上げが押し上げ要因となった。酒類・たばこでは、特にたばこの値上げが影響した。CPIのうち比重が大きい食品・飲料(酒類を除く)(3.2%上昇)では、肉類、食油・バター、乳製品、卵、コーヒー、茶類、マテ茶、パン類なども前月と同様に押し上げ要因になった。

7月15日付の現地紙「ラ・ナシオン」によると、6月のインフレ率の発表を受けて経済省関係者は「食品やコモディティのインフレはこれまで国際価格の上昇に影響されていたため、(今回のINDECの発表は)予想どおり低下する傾向にあり、年末に向けてさらに低下していく」と楽観的な見通しを示した。アルゼンチン中央銀行が7月8日に発表した最新の経済見通しの集計中央値(REM)では、6月のインフレ率は3.2%と予想。また、今後の7月から11月にかけては、各月のインフレ率は2%台に低下する、と予想している。REMは、国内外の41人の民間エコノミストを対象にしたアンケート結果に基づく。これを踏まえると、経済省と民間の見通しは一致している。

7月17日付の現地紙「クラリン」(電子版)は、ブエノスアイレス市の統計センサス局のデータに基づくと、同市約300万人に占める中間層の割合が、2017年の52.5%から2021年は44.8%まで7.7ポイント減少した。主な要因は、高インフレ率、景気低迷、収入の減少だとしている。中間層とは、住居が持ち家であると同時に、月当たりの世帯収入が9万9,683ペソ(約11万3,639円、1ペソ=約1.14円)から31万8,988ペソの世帯を指す。さらに、世帯収入が9万9,683ペソを下回る低所得者層の割合は、2021年には46.6%に達しており、約半数の市民が低所得の問題を抱えている。それでも、首都ブエノスアイレス市の貧困率は全国で最も低い(2021年4月8日記事参照)。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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