EU、英国の北アイルランド向け緩和措置の延長を受け入れ

(EU、英国)

ブリュッセル発

2021年07月01日

欧州委員会のマレシュ・シェフチョビチ副委員長(EU機構関係・将来展望担当)は6月30日、グレートブリテン島から北アイルランド向け食品移送の手続き緩和措置の期限を2021年9月30日まで延長するという英国の要求を、条件付きで受け入れると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。EUは、英国が3月3日にグレートブリテン島から北アイルランドへの食品移送において求められる証明書の提出免除などの延長を発表した際(2021年3月5日記事参照)、EU側との合意を経ずに英国が単独で延長を判断したことに対し、EU離脱協定のアイルランド・北アイルランド議定書(以下、議定書)などに違反すると批判。両者はその後、議定書の実施について離脱協定合同委員会などの場で解決策を模索していた(2021年6月11日記事参照)。

シェフチョビチ副委員長は、延長によって、北アイルランドのスーパーマーケットをはじめとする事業者がサプライチェーンの見直しなど離脱後の変化に順応する時間を確保することができると説明した。ただし、EU側による延長の「受け入れ」は無条件ではなく、延長期間中のEUの食品衛生基準への準拠、各種証明書の提出義務、EU市場への流通を防止すべく「北アイルランド限定(NI only)」をパッケージおよびラベル表示で明記することなどを英国が認めることが条件だと強調した。英国に対しては、引き続き、合同委員会などでの両者の対話を通じた解決を進めることが重要だと述べ、信頼関係を損なうような単独での決定を行わないようくぎを刺した。

さらに、シェフチョビチ副委員長は、議定書の実施に関する実務的な解決策について、幾つかの分野での見通しを示した。まず、グレートブリテン島から北アイルランドへの医薬品の供給について、北アイルランドでのジェネリック医薬品の安定的な供給などを確保すべく、欧州委が2021年秋の早い時期に法案を提示すると表明した。また、英国からEUへ自動車で入域の際に運転手が自動車保険証書(通称:グリーンカード)を提示する義務を撤廃する意向も明らかにした。これにより、特に北アイルランドからアイルランドに自動車で入国する際の混雑緩和が期待される。そのほか、盲導犬ほか生きた動物のグレートブリテン島と北アイルランド間の移動における手続きについても緩和すべく、解決策を見いだしたと述べた。

(安田啓)

(EU、英国)

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