米台が2016年以来初となる通商協議を開催

(米国、台湾、中国)

ニューヨーク発

2021年07月01日

米国通商代表部(USTR)は6月30日、台湾との貿易投資枠組み協定(TIFA)に基づく協議をバーチャル形式で開催したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今後も、今回新たに立ち上げた労働に関する作業部会や農業、知的財産などの作業部会を含めて、協議を進めていくとした。

米台間のTIFAに基づく協議は、オバマ政権下の2016年に開催された第10回を最後に、実質的に停止していた。バイデン政権になり、今回の第11回開催をもって4年8カ月ぶりの再開となる。USTRはプレスリリースで、「(米台)双方はハイレベルの通商協議の再開を歓迎するとともに、米台貿易・投資関係の深化のみならず、労働者中心の通商政策を支持し、グローバル・サプライチェーンにおける強制労働に対抗していく民主的パートナーとして緊密に連携していく意欲を表明した」と、今回の協議を総括している。また、APECやWTOなどの国際的枠組みでの協力に触れるとともに、強靭(きょうじん)なサプライチェーンの重要性についても議論を行ったとしている。2020年12月には台湾経済部が、台湾積体電路製造(TSMC)による米国アリゾナ州での半導体工場建設を許可するなど、半導体産業では既に米国内のサプライチェーン強化に向けた動きが出ている(2021年6月21日地域・分析レポート参照)。

一方、米国が懸念点に挙げている台湾における米国産牛・豚肉の市場アクセスに関する障壁や、著作権法、デジタル著作権侵害、金融サービス、投資および規制の透明性といった通商上の諸問題に関しても、解決に向けて協力を深めていくとした。なお、米国連邦議会からは超党派で、米中摩擦を背景とした戦略的観点も含めて、台湾との自由貿易協定(FTA)締結を求める声が以前から上がっているが、今回のUSTRのプレスリリースには、FTAに関する言及はなかった。中国政府は最近の米台接近を受けて、米国政府に対して、直ちに全ての公式なかたちでの台湾との交流を絶つよう呼び掛けている。

(磯部真一)

(米国、台湾、中国)

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