フィリピン中銀、経済活性化のため低金利政策を維持

(フィリピン)

マニラ発

2021年07月01日

フィリピン中央銀行(BSP)は6月24日、金融政策委員会において、政策金利の水準を据え置き、金融緩和を維持することを発表した。政策金利の翌日物借入金利を2.0%、翌日物預金金利を1.5%、翌日物貸出金利を2.5%に据え置き、2020年11月の政策金利引き下げ以降、過去最低の低金利を続ける(2020年11月25日記事参照)。

地元報道によると、BSPは政策金利を据え置いた理由として、主に2点を挙げる。1点目は、国内経済の活性化だ(政府通信社6月24日)。BSPによると、新型コロナウイルスの影響が続く中で、フィリピン経済の状況は好転しつつも、景気の回復は脆弱(ぜいじゃく)性を有している。低金利政策を継続することで、個人や事業者が資金を借りる際のコストを低減させ、銀行による貸し出しが増加する。それにより、国内の経済活動が安定的に行われる状態を維持する狙いがある。

2点目は、物価上昇率の予測値について、2021年から2023年にかけて依然として政府の目標範囲(注)の2~4%に収まると見込むためだ。国際的な原油価格の上昇や世界経済の回復が物価上昇率を増加させる方向で作用する一方、通貨フィリピン・ペソの増価や食肉の供給増加による食料品の価格上昇圧力の低下は、物価上昇率を抑える方向に寄与するとBSPは指摘する(「マニラ・タイムズ」紙6月25日)。なお、食肉に関しては、アフリカ豚熱(ASF)がフィリピンの家畜の間で流行したため、食肉の供給量の減少や、それに伴う食料品価格の上昇が問題となっていた。政府は食肉輸入の増加によって、供給不足の解消を図る意向だ。

INGバンクのシニア・エコノミスト、ニコラス・マパ氏はBSPの発表に関して、「物価上昇圧力が減退し、今後の数カ月、インフレ率が政府目標の範囲に収まる見込みであることを考慮すると、BSPは政策金利の引き上げを2022年まで行わず、現行の低金利政策を維持する可能性がある」とコメントした。

(注)フィリピン政府は、物価上昇率の目標範囲を明示し、物価上昇率の予想値が範囲内に収まるように金融政策を運営するインフレターゲットを導入している。政府は、2021年から2024年まで、年間での消費者物価指数(CPI)上昇率の目標範囲を2~4%としている。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

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